民泊・ホテルの本人確認とは?宿泊者名簿・無人チェックイン・eKYC活用を解説

ホテル・旅館や民泊施設では、宿泊者名簿の作成と正確な記載を確保するための本人確認が重要です。無人チェックインや事前登録を導入する場合も、施設の営業形態に適用される法令・ガイドラインを踏まえ、宿泊時の確認方法を設計する必要があります。
- ホテル・旅館と住宅宿泊事業法に基づく民泊では、適用される制度や確認方法が異なる
- 2025年4月から、旅館業では一定の要件を満たす自動チェックイン機器等による本人確認が新たに認められている
- 事前eKYCは登録情報の確認や入力負担軽減に役立つが、それだけで宿泊時の本人確認要件を満たすとは限らない
- 日本国内に住所を持たない外国人宿泊者については、旅券の呈示・写しの保存などにも注意が必要
民泊・ホテルで本人確認が必要な理由
宿泊施設の本人確認は、予約者と実際の宿泊者を確認し、宿泊者名簿を正確に作成することが主な目的です。緊急時の対応や施設の安全な運営にもつながります。
ただし、予約サイトのアカウント登録時に身分証を確認することと、宿泊施設で求められる本人確認は同じではありません。予約者以外の人が宿泊する可能性もあるため、誰が、いつ、どの情報を使って確認するかを整理する必要があります。
ホテル・旅館と民泊では本人確認のルールが異なる
宿泊施設の営業形態によって、主に旅館業法または住宅宿泊事業法が関係します。まずは自社施設に適用される制度を確認しましょう。
| 項目 | ホテル・旅館など | 住宅宿泊事業法に基づく民泊 |
|---|---|---|
| 主な制度 | 旅館業法 | 住宅宿泊事業法 |
| 宿泊者名簿 | 作成・3年間の保存が必要 | 作成・3年間の保存が必要 |
| 本人確認 | 対面または要件を満たすICT等による確認 | 宿泊開始までに、宿泊者それぞれについて対面または要件を満たすICT等による確認 |
| 無人運用 | 自動チェックイン機器等を使う場合は所定の要件を確認 | 住宅宿泊事業法のガイドラインと自治体の運用を確認 |
旅館業法の運用では、宿泊者名簿の正確な記載を確保するための本人確認方法が定められています。住宅宿泊事業法のガイドラインでも、宿泊行為の開始までに宿泊者それぞれの本人確認が必要とされています。
また、条例や施設の条件によって追加の確認事項がある場合があります。具体的な運用は所管の保健所・自治体に確認してください。
2025年4月から変わった旅館業の無人チェックイン
厚生労働省は2025年4月1日から、旅館業におけるフロント対面での本人確認の代替方法として、自動チェックイン機器等を通じた情報照合を新たに追加しました。
従業員による確認
対面、または宿泊者の顔・旅券の鮮明な画像と施設近傍からの発信を確認できるICTを利用する方法です。
自動チェックイン機器等による照合
宿泊者と事業者が事前に共有した本人確認情報・二次元コードや暗証番号等を、施設の機器等で照合する方法です。
いずれも所定の条件への適合が前提です。事前にeKYCを実施するだけで、宿泊時の本人確認要件を満たすわけではありません。
新しい方法では、事前共有情報と本人確認情報を組み合わせて照合することがポイントです。事前に本人確認書類をアップロードしただけで、無条件に無人チェックインの要件を満たすわけではありません。
また、この見直しは旅館業における取り扱いです。住宅宿泊事業法に基づく民泊については、同法のガイドラインに沿って確認方法を検討する必要があります。
参考:厚生労働省「令和7年4月1日からフロント要件が変わります!」
外国人宿泊者の本人確認とパスポートの取り扱い
外国人宿泊者の確認では、日本国内に住所があるかどうかが重要です。国籍だけで一律にパスポートの写しを求めるものではありません。
| 宿泊者 | 確認・記録のポイント |
|---|---|
| 日本国内に住所を持たない外国人宿泊者 | 宿泊者名簿に国籍・旅券番号などを記載し、旅券の呈示を求め、写しを保存する取り扱い |
| 日本国内に住所を持つ外国人宿泊者 | 上記と同じ理由で旅券・在留カードの写しを一律に義務付けるものではない。必要な確認は適用法令・自治体の案内に沿って判断 |
| 日本人宿泊者 | 宿泊者名簿の必要事項を正確に記録し、施設に適用される方法で本人確認 |
パスポートの写しなどは重要な個人情報です。取得目的を明確にし、保存期間、閲覧権限、削除方法などもあわせて設計しましょう。
宿泊施設の本人確認でよくある課題
| 課題 | 宿泊者側 | 施設運営者側 |
|---|---|---|
| チェックインの集中 | 受付での待ち時間が発生する | ピーク時に受付業務が集中する |
| 情報の転記 | 予約時と宿泊時に同じ情報を入力する | 転記ミスや名簿の確認負担が生じる |
| 外国語対応 | 確認手順や案内が理解しにくい | 多言語での案内・問い合わせ対応が必要になる |
| 無人運用 | 操作に迷ったときに確認が進まない | 例外対応・本人確認結果の管理が必要になる |
これらの課題を解消するには、宿泊者の事前登録と宿泊時の照合、宿泊者名簿の作成を一連の業務として設計することが重要です。
宿泊施設にeKYCを導入するメリット
eKYCは、スマートフォン等を利用してオンラインで本人確認を行う仕組みです。宿泊施設では、事前の登録情報確認や本人確認書類の確認をオンライン化する用途が考えられます。
事前登録時の本人確認を効率化できる
予約後に本人確認を行うことで、宿泊当日の受付作業を整理しやすくなります。ただし、宿泊時に必要な本人確認や情報照合を省略できるかは、適用制度と運用方法によって異なります。
本人確認方法を用途に応じて選択できる
本人確認書類の撮影、ICチップの読み取り、公的個人認証サービス(JPKI)など、利用者や業務に応じた方式を検討できます。各方式で確認できる情報と、宿泊者名簿に必要な情報は一致しない場合があるため、別途入力・連携が必要になることもあります。
多言語での本人確認案内を整備しやすい
外国人宿泊者が多い施設では、本人確認の操作案内を多言語化することで、手続き中の問い合わせ負担を軽減できる可能性があります。なお、言語対応と旅券確認・名簿管理は別の要件です。
eKYCの基本的な仕組みについては、「eKYCとは?オンライン本人確認の仕組み・種類・導入メリット」でも解説しています。
無人チェックインとeKYCを組み合わせる運用例
以下は、旅館業の自動チェックイン方式を検討する際の業務フローの一例です。法令への適合性は機器・照合方法・施設の運用全体で確認する必要があります。
予約からチェックインまでの流れ
-
予約・事前案内
宿泊者に必要な登録情報とチェックイン手順を案内する。
-
事前登録・本人確認
必要に応じてeKYCを実施し、本人確認情報を登録する。
-
事前共有情報の発行
二次元コードや暗証番号など、施設での照合に使う情報を宿泊者へ共有する。
-
施設での照合
自動チェックイン機器等で、事前共有情報と本人確認情報を照合する。
-
宿泊者名簿・鍵の管理
宿泊者名簿の記録、鍵の受け渡し、例外時の対応を行う。
運用上の注意:上記は業務フローの一例です。実際の運用では、施設の設備や適用法令に応じた確認方法の設計が必要です。
事前eKYCの導入だけでは、宿泊時の照合設備や鍵の受け渡し、旅券の取り扱いまで自動化されるわけではありません。複数のシステムの役割を明確にすることが大切です。
民泊・ホテル向け本人確認システムの選び方
システムを比較する際は、認証精度だけでなく、宿泊施設の業務に組み込めるかを確認しましょう。
| 選定ポイント | 確認すべきこと |
|---|---|
| 適用制度との整合性 | 旅館業法・住宅宿泊事業法・自治体の運用に合った本人確認フローを構成できるか |
| 本人確認方式 | 撮影認証・IC認証・JPKIなど、必要な方式に対応するか |
| 宿泊者の操作性 | スマートフォン操作、案内言語、途中離脱・再試行への対応 |
| 外部システム連携 | 予約管理システム(PMS)、チェックイン機器、宿泊者名簿管理との連携方法 |
| 個人情報管理 | 旅券画像等の保存先、アクセス権限、保存期間、削除ルール |
| 運用変更への対応 | 施設ごとの確認方法や業務フローを変更しやすいか |
民泊・ホテルの本人確認に関するよくある質問
Q. 民泊やホテルで本人確認は必須ですか?
宿泊者名簿の正確な記載を確保するため、適用される法令・ガイドラインに沿った本人確認が必要です。具体的な確認方法は旅館業か住宅宿泊事業かなどによって異なります。
Q. 事前にeKYCを済ませれば、宿泊時の本人確認は不要になりますか?
一律に不要になるわけではありません。旅館業の自動チェックイン方式では、事前共有情報と本人確認情報を施設の機器等で照合するなど、所定の要件を満たす必要があります。
Q. 無人チェックインは法律上認められていますか?
旅館業では、2025年4月から一定の要件を満たす自動チェックイン機器等による本人確認が代替方法として追加されています。ただし、施設の営業形態や自治体の基準も確認が必要です。
Q. 外国人宿泊者には全員パスポートのコピーが必要ですか?
日本国内に住所を有しない外国人宿泊者については、旅券の呈示と写しの保存などが求められています。日本国内に住所がある外国人宿泊者まで同じ扱いになるわけではありません。
Q. eKYCで宿泊者名簿も自動作成できますか?
eKYCは本人確認の仕組みであり、名簿の作成・保存は別の業務です。必要な情報の取得範囲と、宿泊者名簿管理システム等との連携可否を確認してください。
まとめ|宿泊施設の本人確認は「事前登録」と「宿泊時の照合」を分けて設計する
eKYCは本人確認の効率化に役立つが、宿泊施設の法令対応は運用全体で考える
- 旅館業法と住宅宿泊事業法で本人確認の要件を確認する
- 宿泊者名簿・旅券の取り扱い・宿泊時の照合を別々に整理する
- 事前eKYCを導入する場合も、チェックイン機器や管理システムとの役割分担を明確にする
宿泊者の利便性と適切な確認業務を両立するには、施設の運用に合った本人確認方式を選ぶことが重要です。オンライン本人確認の導入を検討している場合は、既存の予約・チェックインフローとの連携方法から整理しましょう。
