レンタルサービスの本人確認とは?不正契約・未返却対策とeKYC活用を解説

カメラや家電、工具、ブランド品など、さまざまな商品を必要な期間だけ利用できるレンタルサービス。オンラインで申込みから決済まで完結するサービスが広がる一方、事業者にとっては、なりすましによる不正契約、商品の未返却、第三者による不正利用などが課題になります。

こうしたリスクへの対策として検討したいのが、申込者が実在する本人かを確認するeKYC(オンライン本人確認)です。本記事では、レンタルサービスで本人確認が必要になる場面、確認方法の違い、非対面受付での運用例、導入時の注意点を解説します。

この記事のポイント
  • オンライン申込みでは、氏名・住所の入力だけでは申込者本人であることを十分に確認できない
  • eKYCにより、来店前や配送前に本人確認を実施し、不正契約対策と受付の効率化を図れる
  • 未返却対策には、本人確認に加えて契約・決済・保証・返却管理を組み合わせる必要がある
この記事の執筆・解説

株式会社ショーケース ProTech事業部 マーケティンググループ
小谷野 宏海(こやの ひろみ)

株式会社ショーケース - 本人確認(eKYC)・IC認証・JPKI領域のマーケティング担当|金融・通信・不動産業界向け本人確認の最新動向を発信

レンタルサービスで本人確認が重要な理由

レンタル事業は、商品を販売して所有権を移転する取引とは異なり、商品を貸し出し、期限までに返却してもらうことを前提としています。そのため、申込者との連絡が取れなくなったり、虚偽の情報で契約されたりすると、商品の回収や損害対応が難しくなる場合があります。

特に、申込みから配送まで対面接点がないサービスでは、入力情報の正しさだけでなく、その情報を登録した人が本人であるかを確認する視点が欠かせません。

レンタルサービスで発生しやすい不正・トラブル

リスク 想定されるケース 対策の方向性
不正契約・なりすまし 他人の氏名や住所、盗用された情報で申込みが行われる 本人確認、申込情報との照合、不審な申込みの検知
未返却・持ち逃げ 返却期限を過ぎても商品が戻らず、申込者とも連絡が取れない 本人確認に加え、決済・保証・督促・回収フローを整備
第三者による不正利用 契約者以外が商品を受け取り、利用・転貸する 受取時の確認、利用条件の明確化、受渡記録の管理

本人確認を実施しても、契約者が必ず商品を返却するとは限りません。「誰と契約したかを確認すること」と「契約どおりに返却してもらうこと」は別の管理課題として設計する必要があります。

レンタルサービスで利用できる本人確認方法

本人確認の方法は、サービスの単価、貸出商品のリスク、受渡方法、利用者層に応じて選びます。

方法 特徴 検討ポイント
対面での書類確認 店舗スタッフが本人確認書類と利用者を確認 店頭受付に適する一方、スタッフの作業負荷が発生
書類画像の提出 利用者が本人確認書類の画像をアップロード 画像の真偽や申込者本人との一致を別途確認する必要がある
撮影型eKYC 本人確認書類や顔の撮影を用いて確認 利用者の操作性、なりすまし対策、審査運用を確認
ICチップ認証 対応する本人確認書類のICチップ情報を読み取る 対応書類・端末、利用者への操作案内を確認
公的個人認証(JPKI) マイナンバーカードの電子証明書を利用 カード・暗証番号の準備、対象利用者との適合性を確認

本人確認書類や顔画像などの個人情報を取得する場合は、利用目的、取得情報の必要性、保存期間、アクセス権限なども整理する必要があります。

高額商品や転売されやすい商品では、申込者の本人性をより確かに確認できる方式を検討する価値があります。一方、本人確認の負担が大きすぎると申込み途中の離脱につながる可能性もあるため、商品やリスクに応じた設計が重要です。

レンタカーの本人確認で注意すべきポイント

レンタカーは、一般的な物品レンタルとは異なり、契約者が誰かを確かめる本人確認に加えて、実際に運転する人の運転資格や貸渡しに関する記録を確認・管理する必要があります。オンライン予約や無人貸渡しを検討する際は、それぞれを別の業務として設計することが重要です。

確認・管理する事項 目的と運用のポイント eKYCとの関係
契約者の本人確認 なりすましや虚偽の申込みを抑え、契約者情報を確認する。 eKYCを活用できる領域。
運転者の運転資格 実際に運転する人の免許の種類・有効性など、貸渡しに必要な事項を確認する。 本人確認とは別の確認が必要。
貸渡記録の作成・管理 借受人・運転者や貸渡しの内容について、関係する制度・運用に沿って記録を管理する。 予約・貸渡管理システム等で対応する領域。

また、非対面・無人での貸渡しでは、予約者と受取者・運転者が一致しているか、鍵をどのように受け渡すかなども検討事項です。カーシェアを含む車両貸出しの本人確認については、カーシェアの本人確認と不正利用対策も参考にしてください。

非対面レンタルにおける本人確認の流れ

オンライン申込みから配送・返却までの流れを、5つの工程に分けて整理します。

  1. 01

    商品選択・申込み

    利用者がレンタル商品、利用期間、配送先などを入力する。

  2. 02

    eKYCによる本人確認

    本人確認書類やICチップ等を用いて本人性を確認し、申込情報と照合する。

  3. 03

    審査・決済・契約

    本人確認結果に加え、決済状況、貸出条件、必要に応じた保証等を確認する。

  4. 04

    発送・受け渡し

    配送または店舗・ロッカーで商品を引き渡す。必要に応じて受取者も確認する。

  5. 05

    返却・状態確認

    期限内の返却を確認し、延滞時の連絡、破損時の対応、記録管理を行う。

運用設計のポイント:eKYCは主に「02 本人確認」の工程を担います。決済、配送、貸出審査、受渡、返却管理は別の仕組みや運用と連携させる必要があります。

レンタルサービスにeKYCを導入するメリット

レンタルサービスにeKYCを導入する4つのメリット。不正利用の防止、業務の効率化、顧客体験の向上、法令対応の強化を図解

なりすましや虚偽情報による申込みを抑止しやすくなる

申込時に本人確認を組み込むことで、氏名・住所などを入力するだけの受付よりも、申込者の本人性を確認しやすくなります。不正申込みの抑止や、審査判断に必要な情報の整備につながります。

来店前・配送前に確認を済ませられる

オンラインで本人確認を完了できれば、店舗での書類確認を減らしたり、配送前に確認結果を踏まえて審査したりする運用を設計できます。利用者にとっても、受付手続きを事前に進められる利点があります。

受付業務の標準化・効率化につながる

担当者ごとに異なりがちな書類確認手順を整理し、本人確認結果を管理できるようにすることで、複数店舗やオンライン受付での運用統一を図れます。

商品や利用条件に応じた確認フローを作れる

例えば、低額商品の短期レンタルと高額機材の長期レンタルでは、必要な確認の深さが異なる場合があります。リスクに応じて確認方法を選び、利用者の負担とのバランスを取ることが重要です。

レンタルサービス向け本人確認システムの選び方

本人確認システムを比較するときは、認証精度だけでなく、既存の予約・契約業務に無理なく組み込めるかを確認しましょう。特に次の5つの視点が重要です。



01|本人確認方式の対応範囲

撮影認証、ICチップ認証、JPKIなど、取扱商品や顧客層に合った方式を選べるかを確認します。

確認ポイント:利用可能な書類・スマートフォン・認証方式は十分か


02|予約・契約フローとの連携

会員登録や予約、決済の途中に本人確認を組み込み、利用者が手続きを行き来せずに完了できるかが重要です。

確認ポイント:既存サイトへの組み込み方法やAPI連携の柔軟性は十分か


03|確認結果の活用・管理

本人確認の結果を貸出審査や商品受渡しの判断に使えるよう、必要な情報を適切に連携・管理できるかを確認します。

確認ポイント:審査担当者への通知や管理画面・データ連携に対応できるか


04|利用者の操作性

スマートフォンだけで迷わず操作できるかは、申込み途中の離脱を防ぐうえで重要です。実際の操作画面を確認しましょう。

確認ポイント:案内のわかりやすさ、操作数、エラー時の再試行は適切か


05|個人情報・セキュリティ管理

本人確認書類や顔画像などを扱うため、取得情報の範囲、保存期間、閲覧権限、委託先の管理を確認します。必要以上の情報を取得・保存しない設計も大切です。

確認ポイント:セキュリティ体制、データの取扱い、運用権限を説明できるか

本人確認に成功したことだけをもって自動的に貸出しを確定するのではなく、確認結果をどのように契約審査やリスク判断につなげるかも合わせて検討しましょう。

レンタルサービスの本人確認に関するよくある質問

Q. 本人確認の際には、どの書類を利用できますか?

利用できる書類は本人確認方式によって異なります。例えば、ICチップ認証では対応するマイナンバーカードや運転免許証など、公的個人認証(JPKI)ではマイナンバーカードを利用します。実際の対応書類や利用環境は、導入するサービスの仕様を確認してください。

Q. eKYCを導入すれば未返却や持ち逃げを防げますか?

本人確認は不正契約の抑止や契約者情報の確認に役立ちますが、未返却そのものを防止するものではありません。保証、決済、返却通知、延滞時の対応などとの組み合わせが必要です。

Q. 非対面で商品を貸し出す場合、どのタイミングで本人確認すべきですか?

一例として、申込み後から契約確定・発送前までの間に本人確認を行う方法があります。受取者の確認が必要な場合は、配送・引渡方法も合わせて検討してください。

Q. レンタカーの運転免許確認もeKYCで完結できますか?

eKYCによる本人確認と、運転免許の資格・有効性の確認は別です。ProTech ID Checkerは運転資格情報の読み取り・判定に対応していないため、レンタカー事業に必要な運転資格確認は別途行う必要があります。

Q. 高額商品だけ本人確認を厳しくすることはできますか?

商品価格や利用期間、取引リスクに応じて本人確認方式や審査フローを分ける設計は考えられます。具体的な分岐条件やシステム連携方法は、利用中の申込み・契約管理システムと合わせて検討します。

まとめ|本人確認と返却管理を組み合わせ、安心できるレンタル運営へ

レンタルサービスでは、非対面受付の利便性を高めるほど、申込者が本人かどうかを確かめる仕組みが重要になります。eKYCは、なりすましや虚偽情報による不正契約への対策として活用でき、事前受付の効率化にもつながります。

一方、未返却・破損・第三者利用などのリスクには、本人確認だけでなく、契約条件、決済、保証、受渡、返却管理を組み合わせた運用が必要です。取り扱う商品と利用者の負担に合わせて、適切な確認フローを検討しましょう。

まとめ

本人確認で不正契約のリスクを抑え、契約・返却管理と組み合わせて安全なレンタル運営へ

  • 申込者の本人性を確かめ、不正契約・なりすましへの対策を強化する
  • eKYCを活用し、来店前や配送前の本人確認と受付業務の効率化を図る
  • 未返却対策は、決済・保証・受渡・返却管理まで含めて設計する