通信事業者の本人確認とは?2026年の法改正とIC認証・JPKIへの対応を解説

通信事業者の本人確認では、契約者の氏名や住所を確認するだけでなく、対象となる通信サービス、契約者が個人か法人か、対面・非対面の申込方法などによって、適切な手続きを選ぶ必要があります。2026年には非対面本人確認の方法が見直され、データ通信サービスなどへの本人確認義務の拡大も法制化されました。
本記事では、MNO・MVNOを含む通信事業者の担当者に向けて、本人確認が必要な契約、確認事項、法改正、利用可能な方式の考え方、実際の申込フローまでを順に解説します。
本人確認方式の選定は、対象となる契約と確認事項の整理から始まります。
- 対象を確認する:どの通信サービス・契約に本人確認が必要か
- 確認事項を整理する:誰に対して、何を確認するか
- 実施方法を決める:申込チャネルに応じて、適用可能な方式と運用を選ぶ
ICチップ認証やJPKIは選択肢の一つです。すべての契約に同じ方式を適用できるとは限りません。
通信事業者の本人確認は、どの契約で必要になる?
携帯電話不正利用防止法は、携帯電話などが犯罪に悪用されることを防ぐため、対象となる通信役務の契約締結時などに本人確認を求める法律です。まずは「MNOかMVNOか」よりも「何のサービスを、誰と、どのように契約するか」を確認します。

音声通話サービスの契約
音声通話が可能な携帯電話サービスは、従来から本人確認義務の中心的な対象です。新規契約時には、法令に定められた方法で契約相手方の本人特定事項を確認する必要があります。店頭での申込とオンライン申込では、選択できる確認手続きが異なります。
データSIM・SMS付きSIMの契約
2026年5月29日に公布された改正法は、本人確認義務等の対象を音声通信以外の携帯通信役務にも広げるものです。データ通信専用SIMやSMS機能付きSIMも検討対象になりますが、2026年4月の本人確認方法の改正と、対象サービスの拡大は別の制度変更です。対象役務の具体的な範囲と施行時期を確認し、既存のデータSIM契約に直ちに同じ義務が生じたと誤解しないことが大切です。
MNO・MVNO・販売代理店で整理すべきこと
MNOは通信ネットワークを保有する事業者、MVNOは他社のネットワークを利用して通信サービスを提供する事業者です。ただし、本人確認の実施義務は呼称だけで決まりません。通信役務を提供する契約主体、代理店の受付業務、本人確認を外部委託する範囲を確認する必要があります。
対象範囲を整理するための3つの確認事項
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提供する通信サービス
音声通話、SMS付きデータ通信、データ通信専用など
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対象となる契約・手続き
新規契約、追加回線、法人契約、代理人による申込など
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本人確認の実施主体
契約事業者、販売代理店、本人確認業務の委託先の役割分担
契約時には誰の、何を確認する必要がある?
本人確認書類の画像を取得することと、法令上の本人確認を完了することは同じではありません。対象となる契約では、確認すべき本人特定事項を、認められた方法で確認し、必要な記録を残すところまで設計します。

個人契約では氏名・住居・生年月日
携帯電話不正利用防止法上、個人の本人特定事項は氏名、住居、生年月日です。確認に使う本人確認書類や電子的な情報が、これらの事項を確認できるものかを確かめます。住所変更や書類の有効期限など、例外的な対応が必要になるケースも想定します。
法人契約では法人と実際の契約担当者を区別する
法人の本人特定事項は名称と本店または主たる事務所の所在地です。さらに、実際に契約締結の任に当たる代表者・担当者等の確認が必要となる場合があります。法人の登記事項を確認する処理と、担当者個人の本人確認は、別の手続きとして設計するのが基本です。
本人確認記録の作成・保存も業務の一部
本人確認の結果だけでなく、確認した事項、確認方法、確認日、使用した資料など、法令に基づき必要な記録を管理する必要があります。携帯電話不正利用防止法では、本人確認記録の保存について契約終了後3年間という規定があります。個人情報の保存・削除方針は、法定保存義務とあわせて整理します。
2026年の法改正で本人確認はどう変わった?
2026年の制度変更は、「本人確認のやり方が変わる」改正と、「本人確認が必要なサービスが広がる」改正に分けると理解しやすくなります。
| 区分 | 主な変更 | 実務上の確認 |
|---|---|---|
| 2026年4月の施行規則改正 | 非対面本人確認方法の厳格化 | 既存の画像送信・撮影フローが改正後も利用可能か |
| 2026年5月公布の改正法 | 本人確認義務等の対象役務をデータ通信等へ拡大 | 対象役務、施行日、経過措置、法人契約への影響 |
2026年4月:書類画像と顔画像の送信による方式などを見直し
2026年4月1日施行の施行規則改正では、非対面契約における本人確認方法が厳格化されました。従来のように本人確認書類の画像と本人の顔画像を送信する方法など、改正により廃止された方法があります。「顔を撮影しているから適法」「本人確認書類をアップロードしているから適法」とは判断できません。
重要なのは、採用している方式が改正後の施行規則に定める要件を満たしているかです。ICチップの読取、公的個人認証、その他の法定手続きについて、申込チャネルと契約者区分ごとに確認します。
2026年5月公布:音声通信以外の役務への対象拡大
2026年5月29日公布の令和8年法律第25号では、データ通信など音声通信以外の携帯通信役務への本人確認義務等の拡大や、契約者管理に関する措置が盛り込まれました。主要な規定は、公布日から1年以内の政令で定める日に施行される仕組みです。
したがって、通信事業者は既存の音声契約フローの適法性と今後対象に加わる役務への対応準備を分けて管理する必要があります。最新の施行日や省令上の細目は公開前に確認してください。
通信事業者が選択する本人確認方式とその違い
本人確認方法は「撮影認証かIC認証か」の二択ではありません。対面・非対面、個人・法人、本人確認書類や電子証明書の種類によって、法令上認められる方法が異なります。以下は方式の特徴を整理したものであり、すべての方式がすべての契約で利用できるという意味ではありません。
| 方式・手続き | 仕組み | 検討時のポイント |
|---|---|---|
| 対面での書類確認 | 店頭などで本人確認書類の提示を受け、所定の方法で確認 | 書類の種類、真正性確認、担当者の運用 |
| ICチップの読取 | ICチップ内の情報を読み取り、本人確認に利用 | 対応書類、読取端末、暗証番号、法令上の要件 |
| JPKI(公的個人認証) | マイナンバーカードの電子証明書による電子的な認証 | 利用する電子証明書、暗証番号、利用者案内 |
| 書類・顔画像の撮影送信 | 書類画像や容貌画像を送信して照合 | 2026年4月の改正で廃止された方法に該当しないか |
| その他の法定方法 | 書類の送付、既存の確認情報の利用など、法令が個別に定める手続き | 契約者区分、補完手続き、適用条件 |
対面での本人確認:店頭の運用も確認する
対面受付では、本人確認書類の提示を受ける方法などが定められています。ただし、書類の券面を目視すればすべて完了するとは限りません。使用できる書類、記録の取り方、IC読取を要する場合の対応などを確認し、店舗や代理店で手続きに差が出ないようにします。
ICチップ認証:券面画像だけに依存しない確認
ICチップ認証では、マイナンバーカードや対応する本人確認書類のICチップ情報を利用します。券面画像のアップロードと異なり、IC内の情報を利用して確認できる点が特徴です。一方で、対応端末、読取方法、暗証番号の要否などは書類・方式によって異なります。利用者が手続きを途中で止めた場合の案内も必要です。
JPKI:電子証明書を使う本人確認
JPKI(公的個人認証サービス)は、マイナンバーカードに搭載された電子証明書を利用する仕組みです。ICチップを読み取る点で共通する部分はありますが、券面事項等を読み取るIC認証と、電子証明書を利用するJPKIは同一の方式ではありません。必要な本人特定事項をどのように取得・確認するか、適用される法定方式とあわせて判断します。
画像送信・その他の方法:改正後の適用条件を確認する
画像を利用する本人確認には複数の手続きがありましたが、2026年4月の改正で廃止された方式があります。一方、本人確認に使うすべての書類提示・送付方法が一律に廃止されたわけではありません。「撮影方式はすべて不可」「IC認証しか使えない」などと一括りにせず、法令の条項と契約条件に照らして判断します。
申込受付から本人確認記録の保存まで、実務フローをどう設計する?
本人確認システムの導入では、認証画面だけを置き換えても業務全体は完結しません。申込受付、本人確認、審査、契約成立、記録保存の各工程で必要な情報と担当者を整理します。
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申込受付
契約する通信サービス、個人・法人の別、契約者情報、申込チャネルを取得します。
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本人確認方法の案内
対象となる法令と契約者区分に応じ、利用可能な本人確認方式を提示します。
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本人確認の実施
本人特定事項を確認し、エラーや不一致が生じた場合は再試行・別手続き・有人確認へ振り分けます。
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審査・契約情報との照合
申込者情報と本人確認結果を照合し、必要な確認が完了したか判断します。
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記録の保存・管理
確認方法、日時、確認結果など必要な情報を保存し、後日の照会に対応できる状態にします。
利用者の途中離脱を減らすには
オンライン申込では、IC読取に対応した端末の準備、暗証番号の入力、アプリへの遷移などで利用者がつまずく場合があります。開始前に必要なものを案内し、失敗理由に応じて再試行方法を示すことで、法令上必要な確認を維持しながら手続きを進めやすくできます。
代理店・外部委託先を含む運用では
店頭や販売代理店を利用する事業者では、本人確認の受付主体と契約主体が異なることがあります。確認結果の受け渡し、手動審査が必要な場合の連絡、記録の保管場所、権限管理を事前に定めることが重要です。
通信事業者向け本人確認システムの選び方
eKYCサービスを比較する際は、認証精度や価格だけでなく、自社の対象契約を法令に沿って処理でき、既存の申込・審査業務につなげられるかを確認します。
必要な本人確認方式をカバーできるか
音声通話サービス、将来の対象拡大が見込まれるデータ通信サービス、個人・法人、対面・非対面など、自社の受付パターンを洗い出します。そのうえで、ICチップ認証やJPKIを含む必要な方式に対応できるか、方式の追加・変更にどの程度の開発が必要かを確認します。
申込フォームや審査システムと連携できるか
本人確認だけを別画面で完了させても、審査担当者が結果を手作業で転記する運用では負荷が残ります。既存フォームからの遷移、API連携、管理画面での確認、本人確認結果の出力など、業務に必要な接続方法を確認します。
本人確認記録・個人情報を適切に管理できるか
確認結果を誰が閲覧できるか、どの情報をどの期間保存するか、監査や問い合わせ時に必要な情報を取り出せるかを確認します。保存する情報を増やせばよいわけではなく、法令上必要な記録と個人情報の最小限の取り扱いを両立する設計が重要です。
制度変更後も運用を見直しやすいか
法改正のたびに申込サイトを大規模改修する運用では、対応コストが大きくなります。本人確認方式の切替、対象サービスの追加、案内文の更新などを柔軟に行えるかも比較しましょう。ローコードで導入できるサービスは、導入時だけでなく運用変更時の負担を抑える選択肢になります。
導入検討時のチェックポイント
- 契約種別ごとに、適用される本人確認方法を整理できているか
- IC認証・JPKIなど必要な方式と、対応する本人確認書類を確認したか
- 申込フォーム・審査・顧客管理システムとの連携方法が明確か
- 本人確認記録の保存・出力・アクセス権限を確認したか
- 法改正や受付チャネルの追加時に方式を変更しやすいか
通信事業者の本人確認に関するよくある質問
MVNOにも本人確認義務はありますか?
MVNOであっても、法令の対象となる通信役務の契約を取り扱う場合は本人確認が必要です。MNO・MVNOという呼称だけで判断せず、契約主体と提供役務を確認します。
データSIMの契約でも本人確認は必要ですか?
2026年5月公布の改正法では、音声通信以外の携帯通信役務への対象拡大が盛り込まれています。具体的な対象役務や施行日、経過措置は、最新の法令・政省令を確認してください。
2026年4月以降、本人確認書類の画像送信は一切使えませんか?
2026年4月の改正で廃止された非対面本人確認方法がありますが、すべての書類提示・送付方法が一律に禁止されたという意味ではありません。契約者区分、対面・非対面、法定方式の適用条件を個別に確認する必要があります。
ICチップ認証とJPKIは同じですか?
同じではありません。ICチップ認証は対応書類のICチップ情報を利用する確認方法の総称で、JPKIはマイナンバーカードの電子証明書を利用する公的個人認証の仕組みです。取得・確認できる情報や利用手順が異なります。
法人契約では担当者の本人確認も必要ですか?
法人の本人特定事項に加え、実際に契約締結の任に当たる代表者・担当者等について確認が必要となる場合があります。法人の確認と担当者個人の確認を分けて運用設計してください。
まとめ|通信事業者の本人確認は対象契約から整理する
通信事業者の本人確認では、対象となる通信役務・契約者区分・申込方法を最初に整理することが重要です。2026年4月の方式見直しと、同年5月公布の対象拡大に関する改正法を区別し、対面での書類確認、ICチップ認証、JPKIなどの適用条件を確認しましょう。
本人確認方式の選定に加え、申込受付との連携、審査、記録保存までを一体で設計することで、法令対応と利用者の利便性、業務効率を両立しやすくなります。
※本記事は2026年11月時点の公表資料を基にした一般的な解説です。具体的な法令適用や施行日については、最新の法令・政省令および所管官庁の公表資料をご確認ください。
