バーチャルオフィスの本人確認|犯収法対応とeKYC導入のポイント

バーチャルオフィスは、コストを抑えながら都心の一等地を事業用住所として活用できるサービスとして、起業家やフリーランスを中心に急速に普及しています。
一方で、匿名性の高さから犯罪への悪用リスクも指摘されており、2008年の犯罪収益移転防止法(犯収法)施行以降、バーチャルオフィス事業者は契約者への本人確認が法的に義務付けられました。
本記事では、犯収法の規制内容から個人・法人別の必要書類、対面・郵送・eKYCといった確認方法まで、バーチャルオフィスにおける本人確認の基本をわかりやすく解説します。
バーチャルオフィスとは

バーチャルオフィスとは、実際のオフィスに入居することなく、事業用の住所や電話番号を借りられるサービスです。
物理的なスペースの提供はなく、住所の貸し出しを中心に、郵便物の受け取り・転送、法人登記、電話転送代行などの機能を必要に応じて利用できます。
コストを抑えながら都心の一等地を住所として使えるのがメリットで、起業家・フリーランス・個人事業主に広く活用されてきました。自宅住所を公開せずに事業を運営できる点も、多くの利用者に選ばれる理由の一つです。
バーチャルオフィスは犯収法の対象?
バーチャルオフィス事業者は、犯罪収益移転防止法(犯収法)の規制対象です。
同法第2条第2項第44号に定める「郵便物受取サービス業者」に該当する「特定事業者」として位置づけられており、2008年の法施行以降、契約者に対する本人確認(取引時確認)が義務付けられています。
匿名性の高いバーチャルオフィスが、マネーロンダリングや詐欺などの犯罪に悪用されるケースが多発したことにより、規制対象に加わることとなりました。
義務に違反した事業者には、是正命令違反として2年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金(または併科)などの罰則が科せられ、法人に対しては3億円以下の罰金が科される両罰規定も設けられています。
引用元:犯罪による収益の移転防止に関する法律 | e-Gov 法令検索
バーチャルオフィスに本人確認が必要な理由
バーチャルオフィスは住所のみを貸し出す性質上、契約者の実態が見えにくく、マネーロンダリングや架空法人を用いた詐欺などの犯罪に悪用されるリスクがあります。そのため、バーチャルオフィス事業者が本人確認を怠った場合、犯罪の一端を担う恐れも少なくありません。
こうした犯罪を防ぐため、2008年の犯収法施行により、バーチャルオフィス事業者は「特定事業者」として契約時の本人確認(取引時確認)が義務化されました。確認を怠った事業者には監査・指導のうえ是正命令が発令され、命令違反には2年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金(または併科)が科せられます(犯収法第25条)。
なお、法人に対しては3億円以下の罰金が科される両罰規定も設けられています(犯収法第31条)。法的罰則を受けるだけでなく、違反が公になれば社会的信用を大きく損ない、事業継続にも影響してしまうため注意が必要です。
サービス悪用による間接的被害のリスクにも要注意です。不正利用者に住所や電話番号を貸し出した結果、その住所を使った悪質業者に消費者が騙されるケースも起こりかねません。このような事態は被害者を生み出すだけでなく、社会全体の信頼損失につながってしまうでしょう。
バーチャルオフィスの本人確認方法

ここからは、バーチャルオフィスに契約する際の本人確認方法について、個人の場合・法人の場合どちらも確認していきましょう。
個人の場合
個人がバーチャルオフィスを契約する際は、犯収法に基づき、氏名・生年月日・現住所の3項目を確認できる本人確認書類の提出が義務付けられています。
| 書類 | 備考 |
|---|---|
| 運転免許証 | 表裏両面の提出が必要 |
| マイナンバーカード | 表面のみ(裏面のマイナンバーは不要) |
| パスポート | 住所記載欄がある場合は確認書類として提出可能 |
| 在留カード / 特別永住者証明書 | 外国籍の方はいずれか必須 |
法人の場合
法人がバーチャルオフィスを契約する際には、犯収法に基づき、法人自体の確認と代表者(実質的支配者)個人の確認の両方が義務付けられています。個人契約と比べて必要書類が多い点に注意しましょう。
必要となる書類は以下の通りです。
| 対象 | 必要書類 |
|---|---|
| 法人 | 履歴事項全部証明書(登記簿謄本)※発行から3ヶ月以内 |
| 代表者 | 顔写真付き身分証明書(運転免許証・マイナンバーカード等)+現住所確認書類(住民票など) |
| 実質的支配者 | 実質的支配者に関する申告書(氏名・住所の申告)※事業者によっては現住所確認書類の提出を求める場合あり |
| 担当者(代表者以外が契約する場合) | 顔写真付き身分証明書+現住所確認書類+委任状 |
なお、法人の実質的支配者は次のように定義されています。
| 事業形態 | 実質的支配者 |
|---|---|
|
・非上場の株式会社 ・有限会社 ・投資法人 ・特定目的会社 など |
・議決権が50%超の個人または法人 ・議決権が50%超の個人または法人がいない場合は25%を超える株主すべて ・議決権が25%を超える株主がいない場合は実質的支配者の該当なし |
| ・合同会社 ・一般社団法人 ・学校法人 ・医療法人 ・宗教法人 ・社会福祉法人 ・特定非営利活動法人 など |
・代表社員や代表役員など法人を代表する人 ・代表する人が複数いる場合は全員 |
| ・上場企業 ・国 ・地方公共団体 ・独立行政法人 |
実質的支配者の該当なし |
バーチャルオフィス契約時の本人確認方法
バーチャルオフィスの契約時に行う本人確認方法について、対面・郵送(転送不要郵便による住所確認)・オンライン本人確認(eKYC)の3パターンを確認しておきましょう。
対面

対面での本人確認とは、契約者がバーチャルオフィスの窓口へ直接来店し、担当者が目の前で本人確認書類を照合する方法です。書類と契約者の顔を直接確認できるため、なりすましや不正契約を防ぎやすく確実性の高い手法とされています。
対面確認の一般的な流れは次の通りです。
- 事業者の窓口に本人確認書類を持参して来店する
- 担当者が申込書を記入してもらう
- 提示された本人確認書類と契約者本人を目視で照合する(氏名・顔写真・住所・生年月日を確認)
- 事業者が書類のコピーを取得・保管する
- 審査通過後、契約者の登録住所宛に転送不要郵便を送付し、住所の実在を確認する
提出する書類の例は次の通りです。
| 個人 | 法人 |
|---|---|
| 運転免許証 | 履歴事項全部証明書(発行3ヶ月以内) |
| マイナンバーカード(表面) | 代表者の顔写真付き身分証 |
| パスポート(住所記載あり) | パスポート(住所記載あり) |
なお、事業者によっては対面確認の際に事業内容のヒアリング(面接審査)を同時に行うケースもあります。他の会員と同一住所を共有するサービスの性質上、社会的信用が確認できない場合や事業目的が不明瞭な場合は、審査否認となることもあるため注意しましょう。
対面での本人確認には、次のようなメリット・デメリットがあります。
・利用者と本人確認書類を目の前で照合できるため、なりすましや架空契約のリスクを大幅に低減できる
・記入漏れや書類の不備があっても、担当者がその場でフォローできるため手続きがスムーズに完了する
・本人確認と契約手続きを同時に完了できるため、利用開始までのリードタイムが短くなる
・営業時間や場所の制約があり、仕事で多忙なユーザーには時間調整が負担になる
・1人あたりの対応に時間がかかるため、混雑時は処理件数が限られ、スケーラビリティが低い
・物理的な出向が不要な点がバーチャルオフィスの強みであるため、対面必須の場合は運用コンセプトと相反する
・地方在住や遠方の利用希望者にとってハードルが高い
バーチャルオフィスで対面本人確認を採用する際は、セキュリティの確実性と利用者の利便性のバランスを考慮し、対面とオンライン(eKYC)を併用する運用体制が現実的な選択肢となるでしょう。
郵送(転送不要郵便による住所確認)

郵送による本人確認とは、バーチャルオフィス事業者が契約者の現住所宛に転送不要郵便を送付し、その郵便が確実に届くことで住所の実在を証明する方法です。
転送不要郵便とは、郵便局に転送届が提出されていても転送されない郵便を指します。宛先住所に届かない場合はそのまま差出人(事業者)に返送されるため、 受け取れた場合は、その住所に契約者が確かに居住・在所していることの証明となります。
犯収法では、書類の提出に加えて現住所への居住確認も義務付けられており、転送不要郵便はその主要な手段の一つとして広く採用されています。なお、法令上は転送不要郵便のほか、本人限定受取郵便による確認方法も認められており、事業者によって対応方法が異なる場合も少なくありません。
郵送による本人確認の一般的な流れは次の通りです。
- 申込フォームまたは書類送付により、本人確認書類のコピーと必要書類を事業者に提出する
- 事業者が書類を目視確認し、内容に問題がなければ審査へ進む
- 事業者が契約者の現住所宛に転送不要郵便(申込書・契約書など)を送付する
- 契約者が郵便を受け取り、必要事項を記入のうえ返送する
- 返送書類が事業者に届いた時点で本人確認が完了し、契約成立となる
郵送での本人確認の場合も、個人での契約であればマイナンバーカードや運転免許証などのコピー、法人の場合は履歴事項全部証明書や顔写真付き身分証明書などのコピーが必要となります。
転送不要郵便で本人確認を行う場合、次のようなメリット・デメリットがあります。
・非対面で住所の実在性を確認できる
・導入コスト・システム開発が不要のため、小規模事業者でも低コストで導入できる
・インターネット環境がないユーザーにも対応できる
・実在しない住所や他人の住所での登録を物理的に防ぐことができ、重複契約や詐欺的利用の抑制に効果的
・郵便物の送付・返送確認・書類の突合・不備対応・再送など細かい事務作業が多く、事業者にとって負担が大きい
・利用者にとっても書類のコピーや記入、郵便の受取(不在の場合は再配達依頼など)が必要で、多忙なユーザーには負担となる
・郵便の配達・返送に数日かかるため、対面やeKYCと比べてサービス開始までのリードタイムが長くなる
・個人情報を含む紙書類の保管場所の確保、紛失・破損防止対策、厳重なセキュリティ管理が必要になる
・住所入力ミスがあると郵便が届かず手続きが滞ってしまう
郵送による住所確認は確実性と低コストが魅力である一方、手続きの完了までに時間がかかるという特性上、急ぎの契約には向きません。また、事業者・ユーザーの双方にとって手間が増えてしまいます。
顧客満足度を下げないためにも、対面やeKYCと組み合わせた、複数の本人確認手段を用意しておく必要があるでしょう。
オンライン本人確認(eKYC)

eKYC(Electronic Know Your Customer)とは、スマートフォンやPCを使ってオンライン上で本人確認を完結させる方法です。2018年の犯収法改正により、オンラインでの本人確認が正式に認められました。来店・郵送が不要で、最短即日で手続きが完了するため、バーチャルオフィス事業者への導入も広がっています。
eKYC本人確認を行う場合、メリット・デメリットは次の通りです。
・スマートフォンさえあれば、24時間どこでも本人確認が可能で、来店不要・郵送不要のため利用者の利便性が大幅に向上する
・書類の郵送・保管・手作業による照合が不要になり、人件費や紙・印刷コストを削減できる
・対面や郵送と比べてサービス開始までのリードタイムを大幅に短縮できる
・顔認証・AI照合により高精度な不正検知が叶う
・犯収法などの法令に準拠した対応が可能
・システム導入・運用にコストがかかる
・ITリテラシーが低い利用者が離脱しやすい
・顔写真付き身分証明書がない人は利用できない
・顔写真や身分証データをオンライン上で送受信するため、厳格なセキュリティ対策が不可欠
eKYCは利便性・スピード・コスト効率の面で優れており、バーチャルオフィスとの親和性が最も高い本人確認手段です。導入時はセキュリティ対策の整備とITリテラシーの低い利用者へのサポート体制をあわせて検討しましょう。
▼eKYCについてより詳しく知りたい方は、以下の記事もご参照ください▼
バーチャルオフィスでeKYCが注目される理由
契約手続きのオンライン化が進む中、本人確認だけを対面や郵送で行う必要があることが、申込完結までの大きなボトルネックとなっていましたが、eKYCはこの課題を解決できる手段として注目されています。
eKYCが注目される主な理由は次の4点です。
契約をオンラインで完結できる
バーチャルオフィスは物理的な来店を前提としないサービスです。eKYCの導入により、申込から本人確認・契約成立までの全プロセスをオンライン上で完結できるため、利用者の利便性が大きく向上します。
手続きの大幅な時間短縮
従来の郵送確認では、書類の往復に数日〜1週間かかることがありました。一方eKYCなら、最短即日で本人確認が完了します。事業者にとっても書類管理や転送不要郵便の発送コストが削減でき、業務効率化につながるでしょう。
不正・なりすましを防ぎやすい
eKYCは本人確認書類の画像とその場で撮影したセルフィーを照合する仕組みのため、偽造書類や第三者によるなりすましが技術的に難しくなっています。犯罪への悪用リスクを抑えながら、厳格な審査を実現できるのが特徴です。
申込離脱の防止
対面来店や書類郵送が必要だと、手続きの煩雑さからユーザーが申込を途中で諦めるケースも少なくありません。eKYCを導入することでスムーズな申込体験が提供でき、契約完了率の向上にもつながります。
オンラインにおける本人確認業務の効率化・犯収法への適切な対応のどちらも実現できる方法なので、バーチャルオフィスでの本人確認にeKYCは適しているといえるでしょう。
まとめ
バーチャルオフィスにおける本人確認は、犯収法に基づく法的義務であり、対面・郵送・eKYCの3つの方法から選択できます。
なかでもeKYCは利便性・スピード・不正防止の観点から最も親和性が高く、今後の主流となる手段のため、まだ導入していない場合はなるべく早めに検討する必要があるでしょう。
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