対面の本人確認はこう変わる!2027年法改正で求められる新しい確認方法

銀行・証券・不動産など、日々の対面業務で本人確認を行っている事業者にとって、2027年4月は大きな転換点となります。犯収法(犯罪収益移転防止法)の施行規則改正により、これまでの本人確認方法が大きく変わるためです。

そこで今回は、犯収法改正の背景から具体的な変更点、事業者がいつまでに何を準備すべきかをわかりやすく整理しました。どのような対応が求められるのか具体的に知りたい方は、ぜひ参考になさってください。

2027年4月改正|対面の本人確認が見直しに

2027年4月に向けて、段階的に犯収法(犯罪収益移転防止法)の施行規則が改正されていきます。これにより、対面・非対面の本人確認がどちらも見直されるため注意が必要です。

犯収法とは何か

犯収法(犯罪収益移転防止法)は、犯罪によって得た資金の移動・転用を未然に防ぎ、国民生活の安全と安心、健全な経済の発展に貢献することを目的とした法律です。2007年に制定・公布され、2008年3月に全面施行されました。

具体的には、銀行・証券会社・保険会社・宅地建物取引業者・士業といった幅広い特定事業者に対して、取引時の本人確認や疑わしい取引の届出を義務づけています。

近年、SNSを悪用した「闇バイト」を通じた特殊詐欺や、偽造身分証を用いたなりすましによる不正口座開設が急増するなど、金融犯罪の手口はますます巧妙化してきました。

こうした状況の中で、「従来の本人確認方法ではリスクに対応しきれない」との認識が広まり、法改正へと動き出したのです。

~ 犯収法(犯罪収益移転防止法)についてより詳しく知りたい方は、以下の記事もご参照ください。~

【2027年4月改正予定】犯収法(犯罪収益移転防止法)とは?本人確認について解説

改正の根本的な狙い

犯収法改正の根本的な狙いは「目視だけでは見抜けない偽造書類によるなりすましリスクを排除すること」です。現代では、高精度プリンターを用いた精巧な偽造IDが出回っており、担当者の目視チェックだけでは限界が生じてきました。

そこで本人確認におけるICチップの読み取りを原則化し、書類の真正性をより高めるとともに、結果的にマイナンバーカードを用いた公的個人認証サービス(JPKI)へ誘導することが、今回の改正における核心的な意図といえるでしょう。

犯収法改正の要点

2027年4月に全面施行となる犯収法改正ですが、押さえるべき要点について確認しておきましょう。

対面取引における変更

方式 概要 現行との変更
イ方式 本人確認書類(ICチップ付き・顔写真付き)を提示+ICチップ読み取り 厳格化(従来は目視のみでOK)
ロ方式 書類提示+転送不要郵便で取引関係文書を送付
対象書類は次の3パターン
①ICチップ無し・顔写真付き
②ICチップ無し・顔写真無し
③ICチップ付き・顔写真無し書類
(③はICチップ読み取りも必須)
厳格化(対象書類の要件を整理)

引用元:犯罪収益移転防止に関する年次報告書(令和7年)|警察庁

①改正後イ方式:ICチップ読み取りが必須に


これまでのイ方式は、マイナンバーカードや運転免許証などの写真付き本人確認書類を担当者が目視確認することが中心でした。

改正後は、書類を提示してもらうだけでなく、ICチップ情報の読み取りと画面表示による確認まで手順に含まれます。対象書類はICチップと顔写真が両方搭載されたマイナンバーカード・運転免許証・在留カードなどです。

②改正後ロ方式:転送不要郵便の組み合わせが整理

ロ方式は、ICチップが無い書類(顔写真あり・なし問わず)や、ICチップはあるが顔写真のない書類(16歳未満の在留カードなど)を用いる場合に、対面確認に加えて転送不要郵便による住所到達確認を組み合わせる方式です。

ICチップの書類を提出する場合にはICチップ読み取りが必須となります。

③旧ハ方式・ニ方式(対面):廃止

対面確認における現行ハ方式(写真なし書類2点の提示または補完書類との組み合わせ)・ニ方式(写真なし書類と補完書類・写しの送付による組み合わせ)については廃止となります。

非対面取引における変更

対面だけでなく、非対面の本人確認においても重要な変更があります。

方式(改正後) 確認方法 現行との変更
ハ方式 ICチップ読み取り+セルフィー(容貌)撮影送信 存続(現行ヘ方式)
二方式 存続・一部廃止(現行ト方式のうちICチップ読取部分のみ存続) 存続(現行ヘ方式)
ホ方式 ICチップ読取送信、または書類原本の送付+転送不要郵便 厳格化(現行チ方式から画像情報送信を廃止)
へ方式 偽造防止措置付き書類(住民票・印鑑証明書等)の原本送付+転送不要郵便 厳格化(現行ヌ方式、送付書類の要件を加重)
ト方式 スマホに搭載されたマイナンバーカード機能を使って情報を送信 存続(現行ル方式)
チ方式 書類交付時に確認+取引関係文書を本人限定郵便で送付 存続(現行ヲ方式)
リ方式 民間事業者の電子署名サービスを利用 存続(現行ワ方式)
ヌ方式 マイナンバーカードのICチップに搭載された電子証明書(JPKI)で確認 存続(現行カ方式)

引用元:犯罪収益移転防止に関する年次報告書(令和7年)|警察庁

特に影響が大きいのは現行ホ方式の廃止です。スマートフォンで身分証を撮影し、顔写真(セルフィー)と組み合わせる「現行ホ方式」は、eKYC普及の中心として多くの事業者が採用してきました。

しかし、精巧な偽造書類や写真を使ったなりすましリスクが常に指摘されていたことを背景に、今回の法改正で廃止となります。

また、非対面で書類の写しを組み合わせて送付する方式(現行リ方式)も廃止のため、2027年4月以降は非対面の本人確認においてマイナンバーカードの公的個人認証(JPKI方式)またはICチップ読み取り方式への移行が基本となります

改正の対象となる事業者とは


今回の改正の対象となる「特定事業者」には、以下のような業種が含まれます。

● 金融機関(銀行、証券会社、保険会社など)
● クレジットカード事業者・ファイナンスリース事業者
● 宅地建物取引業者
● 宝石・貴金属等取扱事業者(古物商含む)
司法書士・行政書士・公認会計士・税理士・弁護士などの士業
● 郵便物受取サービス事業者・電話受付代行者・電話転送サービス事業者など

これらの事業者は、遅くとも2027年4月1日までに改正に対応した本人確認フローを整備しなければなりません。

いつまでに何を備える?事業者が準備すべき対応策

犯収法の改正施行までに、対象となる事業者に求められることは何か確認しておきましょう。

改正施行に向けたスケジュール

改正施行までのこれまでの大まかな流れ、そして今後のスケジュールは次の通りです。

時期 内容
2023年6月 デジタル庁「デジタル社会の実現に向けた重点計画」閣議決定
非対面の本人確認をマイナンバーカードの公的個人認証に原則一本化する方針を明記
2024年6月 同重点計画を改定・再閣議決定
身分証画像送信方式・写真なし書類の廃止方針を再確認
2025年2月28日 警察庁が「犯収法施行規則の一部改正命令案」のパブリックコメント募集を開始(意見募集期間:2月28日〜3月29日)
2025年6月24日 犯収法施行規則を一部改正・施行
カード代替電磁的記録(スマホ搭載マイナ機能)を用いた本人確認手法「ル」を新設
2026年4月 通称「携帯法」改正施行
ICチップ読み取りへの移行が先行して義務化(犯収法改正の先例となる流れ)
2026年内(目安) 特定事業者は対応システムの要件定義・開発・テスト・ベンダー選定を完了させることが推奨される実務上のタイムリミット
2027年3月31日 現行「ホ方式」(書類撮影+セルフィー)および「リ方式」(写し2点+転送不要郵便)が利用できる最終日
2027年4月1日 改正犯収法施行規則が施行
ホ方式・リ方式が廃止
非対面本人確認はICチップ読み取り(マイナンバーカード等)に原則一本化

「施行までまだ時間がある」と後回しにしがちですが、窓口業務・店舗オペレーションへの影響は少なくありません。システムの改修や機器の導入、スタッフの研修などには相応のリードタイムが必要となるため注意しましょう。

事業者が準備すべき対応

準備は次の5つのステップに分けて考えましょう。

事業者が準備すべき対応
  1. 1.現行の本人確認プロセスの棚卸し
  2. 2.ICチップ読み取り環境の整備
  3. 3.非対面eKYCの方式見直し
  4. 4.例外ケースを含む運用フローの設計
  5. 5.予算確保とスケジュール管理の早期着手
1.現行の本人確認プロセスの棚卸し

まず行うべきは、現行の本人確認プロセスの棚卸しです。

申込導線ごとに、対面・非対面、利用している本人確認書類、確認方式、委託先、記録保存方法を一覧化し、どこで現行ホ方式のような画像送信型に依存しているかを把握しましょう。

全件を同じ方式で直すのではなく、取引類型ごとに残す方式と切り替える方式を切り分ける視点が重要です。

2.ICチップ読み取り環境の整備

犯収法改正後は、マイナンバーカード、運転免許証、在留カード(特別永住者証明書を含む)など、ICチップ付き本人確認書類の読み取りが中心です。

読み取ったICチップ情報と券面情報の照合は法律上の義務としては明示されていませんが、真贋判定の精度を高めるために実務上強く推奨されています。単にICチップが読み取れるだけでなく、照合による確認まで行う運用設計が望ましいと言えるでしょう。

NFC対応端末・読取アプリ・表示確認画面・ログ管理・障害時の代替運用まで含めて整備することをおすすめします。

3.非対面eKYCの方式見直し

今回の改正では、対面だけでなく非対面の本人確認についても方法が見直されます。

非対面eKYCでは、「本人確認書類の画像+容貌画像」によるホ方式に加え、本人確認書類の写し2点+転送不要郵便によるリ方式も同時に廃止され、2027年4月1日以降は原則として継続利用できません。

改正後は、複数の方式を顧客属性・書類種別に応じて使い分ける必要があり、単一方式への切替では対応しきれないケースが生じます。

こうした複数方式の併用・振り分けを効率的に実現する手段として、「ProTech ID Checker」のようなトータル本人確認(TKYC)サービスの導入を検討しておきましょう。TKYCは、ICチップ読取をはじめとする複数のKYC手段を一元的に管理・連携する仕組みで、顧客の書類や状況に応じた最適な本人確認が可能となります。

現行導線がホ方式・リ方式中心の事業者は、単なる方式の置き換えにとどまらず、TKYCサービスの導入を視野に入れた導線設計の見直しを早期に進めておきましょう。

4.例外ケースを含む運用フローの設計

実務では、原則対応だけでなく例外ケースの設計が欠かせません。

「提出できるのがICチップがない写真付書類のみ」という場合や、「住所変更で券面とIC情報がずれてしまう」といった場合などは、通常フローと分けて整理しておきましょう。

例えば住所変更により券面とICチップ情報が一致しない書類については、公共料金の領収証書等の補完書類で、現住所の確認が認められる可能性があります。現場判断に頼らず、分岐条件とエスカレーション先を明文化しておきましょう。

5.予算確保とスケジュール管理の早期着手

犯収法の改正に対応するためには、申込導線の変更や端末の配備、委託先調整、社内規程改定や従業員への教育など、多くのフローが存在します。そのため、予算の確保とスケジュール管理については早期に着手しておくと安心です。

特に、システム改修や委託先との契約見直しは時間を要するケースが多いため、施行日から逆算した実務スケジュールを作成しなければなりません。担当部門間での情報共有を密に行いながら、進捗状況を定期的に確認する体制を整えておきましょう。

現場で増える課題と懸念


犯収法の改正に向けて、現場で増える課題と懸念は次の通りです。

ICチップ読み取りが現場に与える影響

ICチップ読み取りが対面確認の標準になると、これまで目視確認だけで完結していた窓口業務は大きく変わります。

最も懸念されるのは対応時間の増加です。書類の提示を受けてから読み取り操作・結果確認までの一連の流れが加わるため、繁忙時には待ち時間が長くなってしまう恐れがあります。

また、読み取り機器の導入・保守コスト、スタッフへの操作研修なども新たな負担となるでしょう。特に中小規模の事業者や、多店舗展開している企業の場合、機器の調達計画を早期に立てなければなりません。

マイナンバーカードを持っていない顧客への対応

改正後も、すべての顧客がICチップ付きの書類を持っているとは限りません。在留カードを持たない外国人の方や、そもそもICチップ非搭載の書類しか持っていない顧客については、別の方法で対応する必要があります。

こうしたケースでは、書類の組み合わせによる補完的な本人確認や、対面での慎重な審査が必要です。対応漏れや確認不備がコンプライアンス上のリスクにつながるため、担当者への研修と定期的な手順の見直しが欠かせません。

顧客への説明と理解促進

「前はこの方法で本人確認ができていたのになぜできないの?」という疑問を持つ顧客は少なくありません。新しい確認手順をスムーズに進めるには、顧客への事前周知も丁寧に行いましょう。

「偽造書類を使った犯罪から守るために本人確認の方法が変更となりました」といったわかりやすい説明を準備しておくと安心です。窓口スタッフが統一した案内ができるよう、トークスクリプトや掲示物を整えておけば、現場の混乱を防ぎやすくなります。

「ProTech ID Checker」で対面取引の本人確認をスムーズに

「ProTech ID Checker」は、マイナンバーカードのICチップを活用した公的個人認証(JPKI方式)に対応したオンライン本人確認(eKYC)サービスです。

銀行・証券の口座開設や古物買取、各種サービスの会員登録など、幅広い場面での本人確認をオンラインで完結できます。犯収法をはじめとする各種法令に準拠しており、これまでに400社以上の企業・自治体に導入されてきました。

また、2027年4月の犯収法改正を見据えて、ProTech ID Checkerに新たに追加されたのが、クロスデバイス認証付き「QRコード表示オプション」です。この機能は、店頭での対面本人確認において特に力を発揮します。

仕組みはシンプルで、次の4ステップで完結します。

1. 店頭用デバイス(PCやタブレット)にQRコードが自動表示される
2. 顧客が自分のスマートフォンでQRコードを読み取る
3. 顧客のスマートフォン側でICチップ読み取りなどの本人確認を実施
4. 確認結果が店頭用デバイスにリアルタイムで反映される

これにより、店舗側にNFC対応の専用カードリーダーを別途設置することなく、顧客自身のスマートフォンをICチップ読み取り端末として活用できます。窓口スタッフが慣れない機器を操作する必要がなく、顧客も自分のスマートフォンで完結できるため、双方にとってのストレスが大幅に軽減されるのがメリットです。

この「QRコード表示オプション」は、システム改修や新たなUI設計が不要で導入できる点も大きな魅力です。「ProTech ID Checker」をご契約中の企業であれば、追加費用なしで利用できます。

ICチップ読み取りへの移行について「大掛かりなシステム更新が心配」と躊躇している事業者にとって、既存サービスにオプションを追加するだけで対応できるこの方法は、コストと工数の両面で大きなメリットがあるでしょう。

参考:プレスリリース|対面取引の本人確認をサポート!ショーケースのeKYC「ProTech ID Checker」に、クロスデバイス認証付き『QRコード表示オプション』を追加 – 株式会社ショーケース

まとめ

2027年4月の犯収法改正は、対面・非対面を問わず本人確認のあり方を根本から見直すものです。要点を改めて整理すると以下の通りとなります。

  • 対面確認では、ICチップ読み取りが原則的な手順として加わる(改正後イ方式)。
  • 非対面確認では、身分証画像送信(現行ホ方式)と書類写しの郵送(現行リ方式)が廃止される。
  • 施行は2027年4月1日(予定)。機器調達・運用設計・スタッフ研修まで早期着手が不可欠。
  • マイナンバーカードを持たない顧客への例外対応や、現場での証跡保管ルールも整備が必要。
  • ICチップ読み取りができない場合、追加書類の提示だけで補完する便宜的取扱いは認められないため、代替手順の明文化が必須。

改正対応を正確に進めるには、法令要件を理解したうえで準備を進め、余裕を持って2027年4月を迎えることが重要です。

「ProTech ID Checker」のようなICチップ対応済みのeKYCサービスを活用すれば、大規模なシステム改修を行わずにスムーズな移行が実現できます。

競合他社との差別化にもつなげるためにも、早めの準備を進めておきましょう。

ProTechコラム編集部
  • ProTechコラム編集部
  • eKYCツールProTech ID Checker」を提供する株式会社ショーケースのeKYCコラム編集部です。実際にeKYCを日々営業活動&製品提供するスタッフがコラムの執筆から編集まで行っています。

    このコラムではProTech ID CheckerProTech AI-OCRに関わる、法令・商品の機能・導入事例や統計などをまとめて随時提供していきます。