犯収法の公的個人認証サービス(ワ方式)とホ方式を比較|公的個人認証サービスの民間導入事例も紹介
はじめに
公的個人認証サービス利用は2024年1月15日時点で509社の民間企業で導入・活用されています。
(デジタル庁「マイナンバーカードを用いた公的個人認証サービス(JPKI)導入事業者及び事例一覧」より)
本記事では、公的個人認証サービスを活用するワ方式と既存のオンライン本人確認方法である犯罪収益移転防止法のホ方式の比較、メリット・デメリットを解説じます。また、自社サービスへ公的個人認証サービスの導入を検討されている方に向けて民間企業の公的個人認証サービス導入事例についても解説していきます。
公的個人認証サービスとは
公的個人認証サービスとは、マイナンバーカードのICチップに搭載された電子証明書を利用して、オンライン上で利用者本人の認証や契約書等の文書が改ざんされていないことの確認を公的に行うための安全・確実なオンライン本人確認サービスです。
公的個人認証サービスは行政機関だけではなく、民間事業者のサービスにも導入・活用することができます。
また今後、犯罪収益移転防止法・携帯電話不正利用防止法に基づく本人確認手法は公的個人認証サービスに原則一本化する方針が示されています。
公的個人認証サービスの仕組みについては以下の記事をご覧ください。
関連記事:公的個人認証サービスとは?メリット・デメリットと活用シーンを徹底解説
公的個人認証サービス(ワ方式)を導入するメリット・デメリット
-従来のオンライン本人確認方法 ホ方式と比較して-
従来のオンライン本人確認方法である犯罪収益移転防止法の6条1項1号ホ方式(以降、ホ方式)と公的個人認証サービスを利用する犯罪収益移転防止法の6条1項1号ワ方式(以降、ワ方式)を比較してそれぞれのメリット・デメリットについて解説します。
■本人の容貌画像+写真付き本人確認書類画像の送信する方法
(犯罪収益移転防止法 6条1項1号ホ方式)
公的個人認証サービスが利用できるようになる前は、オンライン本人確認の方法としては本人の容貌画像+写真付き本人確認書類画像の送信する方法が最も活用されており、今現在もこの確認方法を採用しているサービスは多いです。
犯罪収益移転防止法では6条1項1号ホ方式(以降、ホ方式)がこの確認方法に該当します。
本人の容貌画像は端末に保存されているデータを使用することはできないので、サービスの申込時にその場で撮影を行う必要があります。
また本人確認書類の厚みや外形、構造、機能等の本人確認の真正性を確認できることや、容貌の撮影時にランダムなポーズをとらせることで本人が撮影していることを確認できる必要があります。
■公的個人認証サービスへの照会をする方法(犯罪収益移転防止法 6条1項1号ワ方式)
マイナンバーカードのICチップに搭載された電子証明書を利用して本人確認をする方法です。
犯罪収益移転防止法では6条1項1号ワ方式(以降、ワ方式)がこの確認方法に該当します。
スマートフォンで本人確認を行う場合、署名用電子証明書パスワードを入力し、スマートフォンにマイナンバーカードをかざすことで本人確認を完了することができます。
上記の2つの方式を様々な項目で比較しました。
・偽装難易度
まず偽装難易度について、ホ方式は本人確認書類を偽装すること自体はできてしまう可能性があります。
ただオンライン本人確認サービスでは本人確認書類の厚みや外形、構造、機能などを確認することで真正性の確認を行うので、不正利用を検知し登録不可の判断ができる可能性が高いです。
ワ方式は偽装が難しいです。本人確認にはマイナンバーカードに搭載されているICチップを利用しますが、このICチップから不正に情報の読み取りをしようとするとICチップが壊れる仕組みになっています。
・なりすまし難易度
次になりすまし難易度について、ホ方式はリアルタイムで本人容貌の撮影が必要な為、別人に成りすますことが難しいです。
端末に保存されているデータを使用することはできないかつ、容貌の撮影時にランダムなポーズをとらせる等、本人が撮影していることを確認する為別人になりすますことが難しいです。
ワ方式もマイナンバーカードの原本をかざし、署名用電子証明書パスワード(暗証番号)の入力を求める仕組みとなっているので、カードの所持認証とパスワード(暗証番号)の知識認証の2要素認証が必要となり、他人によるなりすましは困難です。
・ユーザビリティ(ユーザー側の使いやすさ)
次にユーザビリティ(ユーザー側の使いやすさ)について、ホ方式はリアルタイムで本人確認書類の表面・裏面・厚みの撮影、本人の容貌の撮影がある為、ユーザーの作業は多いです。
ワ方式は署名用電子証明書パスワードを入力し、スマートフォンにマイナンバーカードをかざすだけなのでユーザーの作業が少なくユーザビリティは高いといえます。
・目視確認
最後に目視確認について、ホ方式では本人確認にあたって事業者側の目視確認が必要になります。サービスにもよっては、本人確認書類と容貌の自動比較判定機能など目視確認の負荷を軽減する機能が搭載されていることもあります。
ワ方式は本人確認にあたって目視確認が不要です。ユーザーの登録情報とICチップの情報を自動突合することができるので、事業者側の作業工数を削減することができます。
民間企業による公的個人認証サービスの導入事例
デジタル庁の「マイナンバーカードを用いた公的個人認証サービス(JPKI)導入事業者及び事例一覧」や「民間向けマイナンバーカードご参考資料」の情報を基に、民間企業の公的個人認証サービスの導入・活用事例をご紹介します。
・銀行口座開設時の本人確認
従来はホ方式によるオンライン本人確認を行っており、すべてのお客様情報の入力と本人確認書類の撮影、容貌撮影とステップ数が多いことと、住所の入力不備が多く発生するという課題がありました。
公的個人認証サービスを導入したことでマイナンバーカードから必要な情報を自動で取得するのでステップ数を削減することができ、住所の入力不備を大幅に削減することができました。
・証券口座開設時の本人確認
従来はオンライン申請時に本人確認書類をアップロードしてもらい、事業者側で申請内容の確認を行い、本人限定郵便を送付することで利用を開始する流れでした。
公的個人認証サービスを導入したことでオンラインで本人確認が完結するようになりました。また事業者側の郵送や追加の本人確認書類が不要になり業務の効率化が図れました。
・資金移動における犯罪収益移転防止法に基づいた取引時確認
決済時に連携する銀行口座を登録する際に、従来は本人確認書類の撮影により本人確認を行っていましたが、公的個人認証サービスを導入したことでより確実でスピーディな本人確認が可能になりました。
・住宅ローン契約時の本人確認
従来は住宅ローンの契約手続きをするためには契約書の書面への記入や実印の押印、収入印紙の貼付などを銀行へ来店し実施する必要がありました。
公的個人認証サービスを導入したことで銀行へ来店する必要がなくオンラインで契約手続きが完了するようになりました。
・HPKIカード申請時の本人確認
従来はHPKIカード(※)を申請する際は医師が住民票の写し、身分証のコピー等を郵送する必要がありました。
公的個人認証サービスを導入したことで発行申請フォームに必要事項を入力し、医師免許と顔写真データをセットにして公的個人認証サービスによる電子署名を付して申請することができるようになりました。
※HPKIカード:医師資格確認証。医療従事者がHPKIカードを使い電子署名することで、電子カルテの記録内容等を証明することができる。
エンターテイメント業界における実証実験
デジタル庁「エンタメ領域でのマイナンバーカード利活用に関する実証実験を実施します」によりますと2023年度からエンターテイメント領域におけるマイナンバーカード利用シーンの拡大の可能性を検証するための実証実験が予定されております。
具体的にはまず以下の3点についてそれぞれ提携するイベントと連携し、マイナンバーカードを活用することによって得られる効果や課題について評価・検証を行っていくようです。
2024年3月2日(土)に開催された「第38回 マイナビ 東京ガールズコレクション 2024 SPRING/SUMMER」にて国内初の実証実験が行われました。
不正転売防止を目的として、チケット購入時と会場入場時にマイナンバーカードで本人確認が行われ、複数アカウントによる大量購入や高額での不正転売の防止に繋がる可能性が検証されました。
1.特設エリアへの入場時の活用
マイナンバーカードで本人確認を行い、特設エリアの利用対象者を識別する。
<マイナンバーカード活用方法 例>
・イベント会場内の特設エリア利用者に対し、事前申込時にマイナンバーカードによる本人確認を実施。
・当日イベント会場入場時にもマイナンバーカードによる本人確認を実施し、有資格者に対して入場ゲートでリストバンドを交付。・リストバンド保有者のみが特設エリアに入場可。
2.酒類等提供時の年齢確認に活用
年齢確認にマイナンバーカードを用いることで、確実かつ効率的な酒類の提供を実施する。
<マイナンバーカード活用方法 例>
・チケット購入後、マイナンバーカードで年齢確認し、チケット情報と紐づけ。
・会場入場時に、電子チケット上で年齢確認できた者にはリストバンドを手交。
・提供側は、リストバンドにて年齢確認を行い、酒類を提供。
3.チケット不正転売抑止への活用
転売時にマイナンバーカードで本人確認することで、不正転売の抑止を図る。
<マイナンバーカード活用方法 例>
・興行主が公式2次流通サイトを整備。転売者、及び転売チケットの購入者に対してマイナンバーカードによる本人確認を実施。
・転売チケット購入者については、入場時に別入場レーンにてマイナンバーカードによる当人認証を実施。
このようにデジタル庁もマイナンバーカードの活用を推し進めており、今後さらにマイナンバーカードを活用するシーンや公的個人認証サービスを導入したサービスが増えていくのではと考えられます。
公的個人認証サービス機能を搭載したオンライン本人確認/eKYCツール「ProTech ID Checker」
株式会社ショーケースが提供するオンライン本人確認/eKYCツール「ProTech ID Checker」では本記事で解説した「公的個人認証サービス機能」を搭載しています。
また「ProTech ID Checker」では「公的個人認証サービス機能」とホ方式を併用して導入することも可能です。
【サービスの特徴】
・低コスト:月額1万円から導入可能となります。
・最短1週間で導入可能:主な作業はタグを設置するだけで簡単に導入開始することができます。
・カスタマイズ可能:企業様に合わせたページデザインの変更や基幹システムとの連携にも対応しております。
→オンライン本人確認/eKYCツール「ProTech ID Checker」の詳細はこちら
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オンライン本人確認/カンタンeKYCツール「ProTech ID Checker」
マネー・ローンダリングやテロ資金供与防止を目的とした「犯罪収益移転防止法」に準拠したオンライン本人確認/eKYCツールです。
セキュリティ対策は万全であり、厳しい検証プロセスに基づいたネットワーク・セキュリティを有する金融機関にもご採用いただいております。
サービスの特徴
・導入方法は対象ページにタグを設置するだけ。最短1週間で実装できます。
・また、既存のWEBサイト上で本人確認認証が完結します。
・ユーザーは専用アプリのインストールや別サイトでの確認も不要。
・ProTech ID CheckerはスピーディーかつカンタンにeKYCの導入を可能にします。