金属盗対策法で本人確認が義務化|対象事業者・確認方法・eKYC活用まで解説

2026年6月1日に「盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律」、通称「金属盗対策法」が施行されました。
金属盗対策法では、主として銅からなる特定金属くずを買い受ける事業者に対して、営業所ごとの届出、買受け相手の本人確認、本人確認記録・取引記録の作成と保存などが義務付けられています。
すでに特定金属くず買受業を営んでいる事業者にも本人確認義務や記録作成義務は適用されており、届出については2026年8月31日までの経過措置が設けられています。
本記事では、金属盗対策法で本人確認が必要になる事業者や取引、対面・非対面の本人確認方法、法人取引の確認事項、記録の保存義務、古物営業法との違いについて解説します。
特定金属くずの買受けでは本人確認と記録保存が必要
- 金属盗対策法は2026年6月1日に施行済み
- 主として銅からなる特定金属くずの買受業者が対象
- 営業所ごとに都道府県公安委員会への届出が必要
- 買受け相手の本人確認と、本人確認記録・取引記録の作成が必要
- 本人確認記録と取引記録は3年間保存
- 対面だけでなく、ソフトウェアを使用した非対面本人確認も認められている
この記事でわかること
- 金属盗対策法の概要と施行日
- 本人確認義務の対象となる事業者・取引
- 個人・法人・外国人の本人確認方法
- 本人確認が不要になるケース
- 本人確認記録と取引記録の作成・保存方法
- 古物営業法と金属盗対策法の違い
- eKYCを活用して本人確認業務を効率化する方法
金属盗対策法とは
金属盗対策法の正式名称は、「盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律」です。
太陽光発電設備の銅線ケーブルをはじめ、金属製品を狙った盗難が増加していることを背景に、盗品の処分や流通を防止する目的で制定されました。
同法では、特定金属くず買受業に関する規制だけでなく、一定のケーブルカッターやボルトクリッパーを正当な理由なく隠して携帯する行為の禁止、金属盗の被害に遭うおそれが高い事業者への情報提供なども定められています。
金属盗対策法の主な施行内容
| 内容 | 施行日 | 概要 |
|---|---|---|
| 犯行用具規制 | 2025年9月1日 | 一定のケーブルカッターやボルトクリッパーの不当な隠匿携帯を禁止 |
| 盗難防止情報の周知 | 2025年9月1日 | 太陽光発電事業者など、被害リスクが高い事業者へ情報を周知 |
| 特定金属くず買受業への規制 | 2026年6月1日 | 届出、本人確認、記録作成・保存、警察への申告などを義務化 |
金属盗対策法で本人確認が必要な事業者
本人確認義務の対象となるのは、特定金属くずの買受けを行う「特定金属くず買受業者」です。
法律の施行時点では、主として銅からなる金属くずが対象とされています。代表例として、切断された銅線ケーブルや、破壊されて本来の用途では使用できない室外機などが挙げられます。
特定金属くず買受業を営む場合は、営業所ごとに、営業所の所在地を管轄する警察署長を経由して都道府県公安委員会へ届け出る必要があります。
すでに営業している事業者も届出が必要
2026年6月1日時点ですでに特定金属くず買受業を営んでいる事業者には、3か月間の経過措置が設けられています。
該当する事業者は、2026年8月31日までに届出を行う必要があります。
ただし、経過措置が設けられているのは営業開始の届出です。本人確認、本人確認記録・取引記録の作成と保存などの義務は、2026年6月1日から発生しています。
注意:届出をしていない期間であっても、特定金属くずを買い受ける際の本人確認義務や記録作成義務が免除されるわけではありません。
無届営業には罰則がある
届出を行わずに特定金属くず買受業を営んだ場合、6か月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその両方が科される可能性があります。
このほか、営業停止命令への違反、虚偽の届出、立入検査の妨害などにも罰則が定められています。
古物と特定金属くずの違い

金属製品の取引では、「古物営業法」と「金属盗対策法」のどちらが適用されるのかを整理する必要があります。
判断のポイントは、その金属製品が本来の用途で使用できる状態かどうかです。
古物と特定金属くずの判断
| 状態 | 主な適用法令 | 本人確認 | 例 |
|---|---|---|---|
| 本来の用途で使用できる | 古物営業法 | 古物営業法に基づく本人確認 | 再利用できる室外機、電線など |
| 本来の用途で使用できない | 金属盗対策法、各自治体の金属くず条例 | 金属盗対策法等に基づく本人確認 | 切断された銅線、破壊された室外機など |
古物に当たる室外機や電線などについては、古物営業法に基づく本人確認を行います。
一方、切断された銅線など、本来の用途では使用できず特定金属くずに該当するものを買い受ける場合は、金属盗対策法に基づく本人確認が必要です。
特定金属くずの買受けで本人確認が必要になる相手
本人確認の対象となるのは、買受けの相手方です。
買受けの相手方とは、単に金属くずを店舗へ持ち込んだ人物ではなく、売買契約などの名義人となっている個人または法人を指します。
個人から買い受ける場合
個人との取引では、本人確認書類を使用して、氏名、住所、生年月日などの本人特定事項を確認します。
法人から買い受ける場合
法人取引で、代表者以外の取引担当者が手続きを行う場合は、取引担当者本人の確認に加え、法人の確認も必要です。
法人確認では、登記事項証明書や印鑑登録証明書、法人番号公表サイトの情報などを利用し、法人名称や本店・主たる事務所の所在地を確認します。
法人取引で確認する主な内容
- 取引担当者の氏名・住所・生年月日
- 法人の名称
- 本店または主たる事務所の所在地
- 取引担当者が取引の任に当たっていること
運送業者が持ち込む場合
特定金属くずを持ち込んだ人物が、単なる運送業者であり、その場で代金の受け取りなどを行わない場合、運送業者本人を買受け相手として確認する必要はありません。
この場合は、委託元となる売買契約の名義人について、別途本人確認を行います。
回収業者へ本人確認を委託する場合
特定金属くず買受業者が回収業者を利用する場合、回収業者へ本人確認を依頼することも可能です。
ただし、委託先が行った本人確認に不備があった場合、その責任は委託元である特定金属くず買受業者に帰属します。
仲介業者を介して取引する場合
仲介業者を介して特定金属くずを買い受ける場合は、直接取引を行った仲介業者について本人確認・法人確認を行います。
仲介業者が複数いる場合は、買受業者が直接やり取りした仲介業者が確認対象です。
金属盗対策法における本人確認方法

金属盗対策法では、対面だけでなく、所定のソフトウェアを利用した非対面の本人確認方法も定められています。
対面で本人確認する方法
対面では、買受け相手または取引担当者から、顔写真付き本人確認書類の提示を受けます。
代表的な本人確認書類は以下のとおりです。
- 運転免許証
- マイナンバーカード
- 在留カード
- 特別永住者証明書
- その他、氏名・住所・生年月日・顔写真を確認できる書類
本人確認書類の券面と取引相手の容貌を照合し、同一人物であることを確認します。
非対面で本人確認する方法
非対面では、買受業者が提供するソフトウェアを使用し、本人確認用の画像情報を送信してもらう方法が認められています。
代表的な方法には、以下があります。
- 本人の容貌画像と、写真付き本人確認書類の画像を送信する方法
- 本人の容貌画像と、本人確認書類のICチップ情報を送信する方法
本人確認書類の画像を利用する方法では、氏名、住所、生年月日、顔写真に加え、書類の厚みなどを確認できる画像が必要です。
ICチップを利用する方法では、運転免許証などのICチップに記録された氏名、住所、生年月日、写真情報などを取得します。
ポイント:非対面本人確認を導入する場合は、法令で定められた画像取得やIC情報の取得に対応した本人確認サービスを選ぶ必要があります。
日本に住所がない外国人の場合
日本に住所を有しない外国人から特定金属くずを買い受ける場合は、旅券の提示を受け、国籍や旅券番号などを確認します。
対象となるのは、在留期間が90日を超えず、旅券などによって外国の住所を確認できない場合などです。
本人確認が不要になるケース
一定の条件に該当する場合は、取引のたびに通常の本人確認を行わなくてもよいケースがあります。
2回目以降の継続取引
過去の本人確認記録に登録されている相手との2回目以降の取引で、代金を本人名義の預金・貯金口座へ振り込む場合は、通常の本人確認を省略できることがあります。
ただし、本人確認記録に登録された人物と同一であることを、次のいずれかの方法で確認する必要があります。
- 法人職員証など、同一人物であることを示す書類の提示
- 本人しか知り得ない事項の申告
- 面識があるなど、同一人物であることが明らかな場合
また、氏名、取引日時、振込先口座番号などを記録し、3年間保存する必要があります。
特定金属くずを自ら輸入する場合
特定金属くず買受業者が、自ら特定金属くずを輸入する場合も、買受け相手に対する本人確認は不要とされています。
本人確認記録の作成と保存
本人確認を行った場合は、その都度、直ちに本人確認記録を作成します。
記録は、紙の文書または電磁的記録で作成できます。保存期間は3年間です。
本人確認記録に添付する情報
本人確認方法に応じて、次のような情報や書類を本人確認記録へ添付します。
- 提示を受けた運転免許証やマイナンバーカードなどの写し
- 送信された本人の容貌画像と本人確認書類画像
- 送信された容貌画像とICチップに記録された本人特定事項
- 登記事項証明書や印鑑登録証明書、その写し
- 法人の登記情報
- 国税庁法人番号公表サイトの公表事項
本人確認記録に添付した資料は、本人確認記録の一部として扱われます。
本人確認記録に記載する項目
- 本人確認を行った担当者の氏名
- 本人確認記録を作成した担当者の氏名
- 個人の氏名・住所・生年月日
- 法人の名称・本店等の所在地
- 取引担当者の本人特定事項
- 本人確認方法
- 本人確認書類の名称・記号番号
- 本人確認書類の提示・送付を受けた日付
添付書類に必要事項が記載されている場合は、一部の項目について個別の記録を省略できることがあります。
取引記録の作成と保存
特定金属くずを買い受けた場合は、本人確認記録とは別に、取引内容に関する記録も作成します。
取引記録も紙または電磁的記録で作成でき、3年間保存します。
取引記録に記載する項目
- 買受け相手の氏名または法人名称
- 買受けの日付と時刻
- 買い受けた特定金属くずの量
- 銅線・銅板・金属管などの特徴
- 買受価格
- 現金・口座振込などの支払方法
- 必要に応じて金融機関名、口座番号、口座名義
特定金属くずの特徴については、文字による記録だけでなく、写真を撮影して保存する方法も認められています。
営業所やウェブサイトへの表示義務
特定金属くず買受業の届出後は、営業所ごとに、公衆の見やすい場所へ次の情報を表示する必要があります。
- 事業者の氏名または法人名称
- 届出を行った公安委員会の名称
- 届出番号
- 営業所の名称
古物営業法の標識とは異なり、金属盗対策法では決まった様式はありません。
また、常時使用する従業員が5人以下の場合や、事業者が管理するウェブサイトを持っていない場合などを除き、ウェブサイトのトップページなど、利用者が確認しやすい場所にも表示する必要があります。
盗品の疑いがある場合は警察へ申告
買い受ける特定金属くずが、盗難特定金属製物品に由来する疑いがあると認めた場合は、警察官へ申告する義務があります。
本人確認を拒否された場合、取引相手の説明が不自然な場合、金属くずの入手経路が不明確な場合などは、取引を進める前に確認することが重要です。
古物営業法との違い
金属くずの取引では、金属盗対策法だけでなく、古物営業法や自治体の金属くず営業条例が適用される場合があります。
金属盗対策法と古物営業法の主な違い
| 比較項目 | 金属盗対策法 | 古物営業法 |
|---|---|---|
| 主な対象 | 本来の用途で使用できない特定金属くず | 再利用できる中古品・金属製品 |
| 営業手続き | 都道府県公安委員会への届出 | 公安委員会の許可 |
| 本人確認 | 顔写真付き本人確認書類等で確認 | 本人確認書類等で確認 |
| 記録 | 本人確認記録と取引記録 | 取引帳簿等 |
| 保存期間 | 3年間 | 古物営業法上の規定に基づき保存 |
取引する金属製品の状態や営業地域によっては、金属盗対策法と自治体条例の両方が適用される場合があります。
複数の法令・条例が適用される場合は、より厳格な本人確認方法や記録項目に合わせて運用することが重要です。
eKYCで金属盗対策法の本人確認を効率化
金属盗対策法への対応では、本人確認を実施するだけでなく、本人確認書類や確認日時、取引担当者、取引内容などを正確に記録し、3年間保存する必要があります。
紙や目視のみで運用すると、次のような課題が発生しやすくなります。
- 本人確認書類のコピー漏れ
- 確認担当者や確認日時の記録漏れ
- 書類の紛失や劣化
- 過去の取引記録を探す手間
- 営業所ごとに異なる確認フロー
- 非対面取引に対応できない
eKYCを活用すれば、本人確認書類の撮影、本人の容貌撮影、ICチップ情報の取得、確認結果の電子保存などをデジタル化できます。
紙・目視運用とeKYC運用の比較
| 項目 | 紙・目視による運用 | eKYCによる運用 |
|---|---|---|
| 本人確認 | 担当者が書類を目視確認 | 本人確認画面に沿って確認 |
| 非対面取引 | 郵送など別の手続きが必要 | スマートフォンで完結可能 |
| 記録作成 | 手入力・手書きが中心 | 確認情報を電子データで管理 |
| 保存 | 紙の保管スペースが必要 | 管理画面上で検索・確認しやすい |
| 運用品質 | 担当者によるばらつきが生じやすい | 確認フローを標準化しやすい |
ProTech ID Checkerで本人確認業務を支援
ProTech ID Checkerは、本人確認書類の撮影やICチップ読取、本人の容貌撮影など、複数の本人確認方法に対応した本人確認サービスです。
金属盗対策法で定められた本人確認方法に合わせて、対面・非対面の本人確認フローを整備する際に活用できます。
ProTech ID Checkerの主な特徴
- 運転免許証・マイナンバーカード・在留カードなどに対応
- 本人確認書類の撮影と本人の容貌撮影に対応
- 本人確認書類のICチップ読取に対応
- 対面・非対面の本人確認を一元管理
- 本人確認結果や審査状況を管理画面で確認可能
- ローコード・API・SDKによる導入に対応
本人確認後に必要となる取引記録については、自社の買取管理システムなどと組み合わせ、法令で求められる項目を漏れなく保存できる運用を整備することが重要です。
よくある質問
金属盗対策法はいつ施行されましたか?
金属盗対策法で本人確認が必要なのはどのような事業者ですか?
特定金属くずの本人確認には何が必要ですか?
法人から買い受ける場合も本人確認が必要ですか?
本人確認を毎回行う必要がありますか?
本人確認記録と取引記録は何年間保存しますか?
古物営業法の本人確認を行っていれば対応できますか?
金属盗対策法の本人確認にeKYCは利用できますか?
まとめ
金属盗対策法は2026年6月1日に施行され、特定金属くず買受業者には、営業所ごとの届出、買受け相手の本人確認、本人確認記録・取引記録の作成と3年間の保存などが義務付けられました。
本人確認の対象は、個人だけでなく法人も含まれます。法人取引では、取引担当者本人の確認に加え、法人名称や本店所在地などの確認も必要です。
また、対面だけでなく、本人の容貌画像と本人確認書類画像、またはICチップ情報を利用する非対面本人確認も認められています。
この記事のまとめ
- 特定金属くず買受業に関する規制は2026年6月1日に施行
- 既存事業者の営業開始届出は2026年8月31日まで
- 個人・法人を問わず買受け相手の本人確認が必要
- 対面・非対面の本人確認方法が定められている
- 本人確認記録と取引記録は3年間保存
- 古物と特定金属くずを区別して適用法令を判断する
- eKYCを活用すると本人確認と記録管理を標準化しやすい
事業者は、自社が取り扱う金属製品が古物と特定金属くずのどちらに該当するかを確認したうえで、本人確認、記録作成、保存、警察への申告まで含めた運用体制を整える必要があります。
取引件数が多い場合や非対面での買取を行う場合は、eKYCを活用して本人確認情報を電子的に管理することで、業務負荷の軽減と確認漏れの防止につなげられます。
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