不動産取引に犯収法の本人確認は必要?対象となるケースと対応方法を解説

不動産会社では、不動産売買や仲介、賃貸、管理などさまざまな業務を行います。その中で「犯収法に基づく本人確認は必要なのか」「どの取引が対象になるのか」と疑問を持つ担当者も少なくありません。
犯罪収益移転防止法(犯収法)は、マネー・ローンダリングやテロ資金供与を防止するため、対象となる事業者に取引時確認や確認記録の作成・保存、疑わしい取引の届出などを求める法律です。宅地建物取引業者も特定事業者に含まれており、対象となる取引では本人確認(取引時確認)が必要です。
ただし、不動産会社が行うすべての業務が一律で犯収法の対象になるわけではありません。宅地建物取引業者における特定取引は、主に宅地・建物の売買契約の締結、またはその代理・媒介です。
本記事では、不動産会社が犯収法の本人確認を行う必要があるケース、確認すべき内容、2027年法改正への対応、本人確認システムを選ぶポイントについて解説します。
不動産売買では犯収法の本人確認が必要
- 宅地建物取引業者は犯収法上の特定事業者に含まれる
- 宅地・建物の売買契約やその代理・媒介では取引時確認が必要
- 賃貸借契約や管理業務は、犯収法上の特定取引とは分けて整理が必要
- 2027年4月の法改正により、本人確認方法の見直しも求められる
- 不動産会社は対面・オンライン双方の本人確認体制を整備しておくことが重要
この記事でわかること
- 不動産会社に犯収法の本人確認が必要なケース
- 犯収法の対象となる不動産取引
- 不動産会社が確認すべき本人確認項目
- 2027年法改正で変わる本人確認方法
- 不動産会社が本人確認システムを選ぶポイント
不動産会社に犯収法の本人確認は必要?
不動産会社に犯収法の本人確認が必要かどうかは、行っている取引内容によって異なります。
宅地建物取引業者は、犯収法上の特定事業者に含まれています。そのため、犯収法で定められた特定取引を行う場合には、顧客に対する取引時確認(本人確認)を実施する必要があります。
一方で、賃貸借契約の媒介や不動産管理業務など、すべての不動産関連業務が一律に犯収法の特定取引となるわけではありません。まずは、自社が行う業務が犯収法上の対象取引に該当するかを整理することが重要です。

犯収法とは
犯収法とは、犯罪による収益の移転を防止するための法律です。金融機関や宅地建物取引業者、宝石・貴金属等取扱事業者、士業など、一定の事業者に対して、取引時確認や確認記録の作成・保存、疑わしい取引の届出などを義務付けています。
不動産取引は高額な資金が動きやすく、マネー・ローンダリングに悪用されるリスクがあります。そのため、宅地建物取引業者にも犯収法への対応が求められています。
犯収法の全体像については、以下の記事でも詳しく解説しています。
不動産会社が対象となる理由
不動産売買では、まとまった資金が動きます。犯罪収益を不動産購入に利用したり、売買を通じて資金の出所を分かりにくくしたりするリスクがあるため、不動産取引はマネー・ローンダリング対策上も重要な領域です。
そのため、宅地建物取引業者が宅地・建物の売買契約を締結する場合や、売買契約の代理・媒介を行う場合には、取引時確認を行う必要があります。
本人確認が必要になるケース
宅地建物取引業者が行う宅地・建物の売買契約の締結、またはその代理・媒介が対象です。
売買契約を媒介する場合は、取引内容に応じて売主・買主双方について取引時確認を行うことが求められます。
一方で、賃貸借契約の媒介や不動産管理業務については、宅地建物取引業者の特定取引には含まれません。ただし、犯収法の対象外であっても、本人確認や反社チェック、入居審査、なりすまし対策など、実務上の本人確認が不要になるわけではありません。
補足:本記事で解説している内容は、犯罪収益移転防止法(犯収法)に基づく取引時確認です。宅地建物取引業法に基づく確認や、反社会的勢力排除、入居審査などで実施される本人確認とは、目的や法的根拠が異なる場合があります。
不動産会社が行う業務の中でも、犯収法上の取引時確認が必要な業務と、実務上の本人確認が求められる業務は異なります。まずは以下の表で整理しましょう。
宅地建物取引業者における犯収法(取引時確認)の対象
| 業務内容 | 犯収法上の対象 | 取引時確認の考え方 | 補足 |
|---|---|---|---|
| 宅地・建物の売買契約 | 対象 | 必要 | 売主・買主との取引時確認を実施 |
| 売買契約の代理・媒介 | 対象 | 必要 | 宅建業者が代理・媒介する場合も対象 |
| 賃貸借契約の媒介 | 宅地建物取引業者の特定取引には含まれない | 実務上は本人確認を実施するケースあり | 入居審査・反社チェック・なりすまし対策など |
| 不動産管理業務 | 宅地建物取引業者の特定取引には含まれない | 業務内容に応じて確認 | 契約内容や運用に応じて本人確認を実施する場合がある |
| 法人との売買契約 | 対象 | 必要 | 法人情報、取引担当者、実質的支配者を確認 |
ポイント:不動産会社のすべての業務が犯収法の対象になるわけではありません。まずは「宅地・建物の売買契約、またはその代理・媒介」に該当するかを確認しましょう。
不動産会社が行う本人確認(取引時確認)の内容
犯収法に基づく本人確認では、本人確認書類を確認するだけではなく、取引相手に関する一定の事項を確認する必要があります。
個人との取引と法人との取引では確認項目が異なるため、自社の取引形態に応じて確認フローを整備しておくことが重要です。
個人取引で確認する項目
個人との取引では、本人特定事項として主に以下を確認します。
- 氏名
- 住所
- 生年月日
また、取引目的や職業などの確認が必要になる場合もあります。不動産売買のように高額な取引では、確認漏れがないよう、契約前の段階で本人確認フローを明確にしておくことが重要です。
法人取引で確認する項目
法人との取引では、法人そのものに関する情報に加えて、取引担当者や実質的支配者の確認が必要になります。
- 法人名
- 本店または主たる事務所の所在地
- 取引目的
- 事業内容
- 取引担当者の本人確認
- 実質的支配者の確認
法人取引では、法人の登記情報だけでなく、実際に法人を支配している人物を確認する必要があります。特に海外法人や複雑な資本関係を持つ法人との取引では、確認に時間がかかるケースもあります。
本人確認が必要になるタイミング
取引時確認は、対象となる取引を行う際に実施します。契約締結後に慌てて確認するのではなく、取引開始前から本人確認に必要な書類や情報を案内しておくことが重要です。
売買契約では、本人確認書類の提示、法人確認、実質的支配者の確認など複数の確認が必要になることがあります。確認フローを契約手続きに組み込むことで、確認漏れや手戻りを減らしやすくなります。
不動産会社が確認すべき主な項目
- 個人の場合:氏名・住所・生年月日
- 法人の場合:法人名・所在地・事業内容
- 取引担当者の本人確認
- 実質的支配者の確認
- 取引目的や職業などの確認
- 確認記録・取引記録の作成と保存
不動産会社が犯収法に対応しないリスク
犯収法への対応は、単なる事務作業ではありません。本人確認や記録管理が不十分な場合、マネー・ローンダリングに悪用されるリスクが高まるだけでなく、企業としての信頼にも影響します。
不正取引に悪用されるリスク
不動産取引は高額な資金が動くため、犯罪収益の移転に利用されるリスクがあります。本人確認が不十分なまま取引を進めると、なりすましや不正な資金の流入を見逃す可能性があります。
社内管理や監査対応が煩雑になるリスク
本人確認記録や取引記録が適切に管理されていない場合、後から確認が必要になった際に情報を探す手間が発生します。
紙や個別ファイルで管理していると、担当者ごとに記録方法が異なり、確認漏れや保存漏れにつながることもあります。
顧客・取引先からの信頼低下
本人確認体制が整っていないと、顧客や取引先からの信頼低下につながる可能性があります。特に法人取引や高額取引では、本人確認やコンプライアンス対応の整備状況が企業の信頼性にも関わります。
2027年法改正で不動産会社は何が変わる?
2027年4月に施行予定の犯罪収益移転防止法施行規則の改正では、本人確認方法が見直されます。
これまで非対面本人確認で広く利用されてきた本人確認書類と本人の容貌を撮影する方式は廃止予定となり、ICチップを活用した本人確認が主流になる見込みです。
不動産会社においても、オンライン契約や非対面での本人確認を実施する場合は、法改正を見据えた本人確認方法への対応が重要になります。

本人確認方法の変更
2027年4月以降は、本人確認書類のICチップを活用する方式が中心となります。
たとえば、本人確認書類のICチップ読取と容貌撮影を組み合わせる方式や、マイナンバーカードの電子証明書(JPKI)を活用する方式などが、継続利用できる本人確認方法として重要になります。
現在、本人確認書類の撮影を中心とした本人確認を利用している場合は、法改正までに本人確認方法の見直しを検討する必要があります。
対面契約でもIC認証が重要に
不動産会社では、店舗での契約、対面での重要事項説明、訪問契約など、対面で本人確認を行う場面もあります。
対面取引においても、本人確認書類の券面確認だけでは偽造書類を見抜きにくいケースがあります。ICチップを読み取る対面IC認証であれば、本人確認書類の真正性確認を強化できます。
オンライン契約ではeKYC対応が重要に
オンラインで売買契約や各種申込を行う場合、非対面で本人確認を完結できるeKYCの活用が有効です。
2027年法改正を見据えると、ICチップ読取やJPKIに対応した本人確認方法を選ぶことが重要です。
不動産会社に適した本人確認方法
不動産会社の本人確認では、店舗、オンライン、訪問など、顧客接点に応じて適した本人確認方法を選ぶことが重要です。
不動産会社に適した本人確認方法
| 利用シーン | 適した本人確認方法 | ポイント |
|---|---|---|
| 店舗での契約 | 対面IC認証 | 本人確認書類のICチップを読み取り、真正性確認を強化できる |
| オンライン契約 | eKYC | 来店不要で本人確認を完結できる |
| 法人取引 | eKYC+法人確認 | 法人情報、取引担当者、実質的支配者を確認する |
| 訪問契約 | クロスデバイス型の対面IC認証 | 利用者自身のスマートフォンを活用でき、訪問先でも本人確認しやすい |
| 継続的な取引管理 | 本人確認履歴の一元管理 | 確認記録や審査状況を管理しやすくなる |
店舗で契約する場合
店舗で契約を行う場合は、ICチップを活用した対面本人確認が有効です。
本人確認書類のICチップを読み取ることで、目視確認だけでは判断しづらい偽造書類への対策にもつながります。
オンライン契約の場合
オンライン契約では、eKYCを活用した本人確認が一般的です。
2027年法改正を見据えると、ICチップを活用した本人確認方式に対応しているサービスを選ぶことが重要です。
訪問契約の場合
訪問契約では、営業担当者がお客様の自宅や事業所で本人確認を行うケースがあります。
利用者自身のスマートフォンを活用した対面IC認証であれば、事業者端末に本人確認書類をかざすことへの不安を軽減しながら本人確認を実施できます。

不動産会社が本人確認システムを選ぶポイント
本人確認システムは、法改正への対応だけでなく、実際の運用まで考慮して選ぶことが重要です。
2027年法改正へ継続対応できるか
法改正は今後も継続的に行われる可能性があります。現在の要件だけではなく、将来の制度変更にも対応できるサービスを選ぶことで、システムの再導入や運用変更の負担を抑えられます。
対面・オンラインの両方に対応しているか
店舗契約、オンライン契約、訪問契約など、不動産会社では複数の本人確認方法が必要になるケースがあります。
対面・非対面の両方に対応できる本人確認システムを選ぶことで、本人確認フローを統一しやすくなります。
本人確認履歴を一元管理できるか
本人確認は実施するだけではなく、その後の運用も重要です。
本人確認結果や実施履歴を一元管理できるシステムであれば、業務効率化や監査対応にも役立ちます。
法人確認や実質的支配者確認に対応できるか
不動産売買では法人が取引相手となるケースもあります。
法人取引では、法人情報、取引担当者、実質的支配者など確認すべき項目が多くなります。個人本人確認だけでなく、法人確認にも対応できるかを確認しましょう。
不動産会社向けチェックリスト
- 自社の業務が犯収法の対象取引に該当するか確認している
- 個人・法人それぞれの本人確認フローを整備している
- 取引時確認記録や取引記録を適切に管理できる
- 2027年法改正に対応した本人確認方法を検討している
- 店舗・オンライン・訪問契約の本人確認方法を整理している
- 本人確認履歴を一元管理できる体制を整えている
ProTech ID Checkerで不動産会社の本人確認を支援
ProTech ID Checkerは、オンライン本人確認(eKYC)やIC認証、対面本人確認に対応した本人確認サービスです。
不動産会社においても、店舗での対面本人確認、オンライン契約、訪問契約など、複数の本人確認シーンに対応できます。
ProTech ID Checkerでできること
- eKYCによるオンライン本人確認
- ICチップを活用した本人確認
- 店舗・窓口での対面IC認証
- 訪問契約でのクロスデバイス型本人確認
- 本人確認結果や審査状況の一元管理
- 法改正を見据えた本人確認体制の構築
よくある質問
不動産会社に犯収法の本人確認は必要ですか?
不動産会社で犯収法の対象となる取引は何ですか?
賃貸契約でも犯収法の本人確認は必要ですか?
法人との不動産取引では何を確認しますか?
2027年法改正で不動産会社の本人確認はどう変わりますか?
不動産会社にeKYCは必要ですか?
対面契約ではどのような本人確認方法が適していますか?
不動産会社が本人確認システムを選ぶ際のポイントは何ですか?
まとめ
不動産会社は、宅地・建物の売買契約やその代理・媒介など、犯収法で定められた対象取引において本人確認(取引時確認)を適切に実施する必要があります。
一方で、賃貸借契約や管理業務など、すべての不動産業務が一律に犯収法の対象となるわけではありません。自社の業務が対象取引に該当するかを確認し、必要な本人確認フローを整備することが重要です。
また、2027年4月には本人確認方法の見直しが予定されており、ICチップを活用した本人確認への対応が重要になります。
この記事のまとめ
- 宅地建物取引業者は犯収法上の特定事業者に含まれる
- 宅地・建物の売買契約やその代理・媒介では取引時確認が必要
- 賃貸借契約や管理業務は犯収法上の対象取引とは分けて整理が必要
- 2027年法改正により本人確認方法の見直しが求められる
- 不動産会社は対面・オンライン双方の本人確認体制を整備することが重要
不動産会社では、売買・店舗・オンライン・訪問契約など、さまざまな場面で本人確認が行われます。法改正への対応だけでなく、自社の取引内容に応じた本人確認フローを整理し、継続的に運用できる体制を整備することが重要です。
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